管理された公園や施設で行うスポーツとは異なり、自然の中で活動する登山などのアクティビティには、リスクがつきものです。想定外の天候急変や沢の増水、転倒や滑落、落石、道迷いもあるかも?
フィールドでのリスクを避けるにはどうすべきか。このシリーズでは、筆者が実際に体験した実例も踏まえて、リスク回避のために知っておくべきことを解説します。
登山での飲食は「好み」も大切だけど……
がんばって歩いて、ようやく着いた山頂での食事は、本当においしいですよね。コンビニで売ってるおむすびやパンですら、ふだんとは一味違って、とびきりおいしく感じるものです。
飲食は、多彩な登山の楽しみの中でも、非常に大きなものです。持っていけるのなら、凝った料理でもなんでも、好きなことをすればよいと思うのですが、案外知られていないのが、「適切な補給をしないと、リスクにつながる」という点です。
知っておきたい炭水化物と体脂肪の関係
身近であったエピソードなのですが、歩いていると、後半でいつもバテる人がいて、見ていると、休憩時に何も口にしていないようでした。
「何か食べないと力が出ないですよ」と声をかけたところ、「歩いているときに食べるとおなかがいたくなるんです」とのこと。
そういう体質なのかもしれませんが、途中でカロリー摂取をしないと、長くは歩けません。
固形物を食べるのが心配であれば、カロリー補給ができるゼリー飲料などもあります。上記のエピソードの方には、そういうものをお勧めしたのですが、少しずつでも、行動中に食べられるように慣らしていく方がいいですね。
人間は、食べ物として摂取した炭水化物と脂肪を、酸素を使って燃焼させて身体を動かしています。個人差もありますが、脂肪の体内貯蔵量はかなり大きくて、中程度の強度の運動であれば1週間以上継続できるほどの量が体内に備蓄されています。それに対して、炭水化物の体内備蓄量は非常に少なく、1.5時間で枯渇してしまう程度だそうです。
それでは、体脂肪だけを燃焼させれば、食べずに痩せられて一石二鳥では? と思いますよね。でも、そうは問屋がおろさないのです。
脂肪を燃焼させるには、炭水化物が必須。体脂肪をたっぷりと蓄えていても、炭水化物を補給しないと、燃焼させることはできません。