松戸市民必読の登山本を発見したかも!?
本連載を始めるにあたって、編集部からはたくさんのアウトドア本が送られてきた。毎回その中から「これは!」と思う本をチョイスしているわけだが、連載も回を重ねるにつれてそのストックは減ってくる。そこで新しい本を仕入れるべく、担当M氏と都内某所の大型書店を訪れた。そこにはアウトドア本コーナーがあるからだ。
何冊もの興味深い本をピックアップしていくなかで、この本と出会った。松戸市在住のぼくなら手を出さないわけにはいかない書名の『松戸から登った山70選』である。このタイトル、どういうこと? 松戸市に山はないよ? ギリ標高が高いのはマツモトキヨシの創業者にちなんで命名された「小金きよしヶ丘」くらいなもんでしょ。
松戸から登った山ってどういうことなのか、超ワクワクしながら本書のページをめくり始めたぼくなのだが……。
アルピニズムを捨て「楽しむ登山」への転向
本書は、執筆時点で75歳になる著者・鈴木貫太氏が、これまでにおこなってきた登山の記録である。登山歴50年というベテランで、当初は登山家気質の強いアルピニズムを指向していたが、やがて一般登山に転向したという。その気持ちはよくわかる。
登山での有名な遭難事故に「トムラウシ山遭難事故」がある。2009年夏、北海道のトムラウシ山でツアーガイドを含む18名ものグループが遭難するという事故が発生した。そのうち低体温症で死亡したのは59~69歳の8名だ。
ぼくは高いところは苦手だし、寒いのはもっと嫌なので、山になんか絶対登りたくない。でも、そこには、行ったことのない人間にはわからない魅力も、きっとあるのだろう。山は魔物だとよく言われる。とはいえ、命を落とす危険があってまですることなのか。自ら限界を感じて、潔く一般登山に転向した著者は勇気のある人だと、素直に思う。
で、松戸である。『松戸から登った山70選』というタイトルを見たときに想像したんですよ。
この本が登山の記録なのはわかる。でも松戸に山はない。ということは、著者が松戸にある家を出発して、松戸駅から電車(たぶん常磐線)に乗る。北に向かうなら柏あたりで東武野田線アーバンパークラインに乗り換えて、大宮から東北新幹線で……というように、各地の山へ向かっていく様子が描写されているのだろう。
主題は山というより、松戸から山へ向かう旅程の楽しさを描写している、いわば「乗り鉄エッセイ集」なのではないかと。
全然違いましたね。