伊豆半島最南端から御前崎まで広がる駿河湾ですが、最大水深は2500mにもおよぶのだとか。日本の魚類は約2300種いるとされるなか、その半分近くの約1000種類の魚が駿河湾に生息しているのだそうです。もちろん珍しい深海魚の数々も住んでいます。
ちょっとグロテスクな見た目の魚も多い深海の生き物たちですが、実はおいしい魚も多く、沼津に行くと深海魚料理が楽しめます。そんな沼津にある沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムの展示解説員・山口真由さんにおいしい深海魚について伺いました。
煮つけも刺身もおいしいキンメダイも深海魚の仲間
「食材としてとても人気が高いキンメダイやサクラエビも普段は深海にいるんです。深海魚というと親しみがないと思っている方もいらっしゃいますが、とても身近な生き物たちなんです」と山口さん。
ちなみにキンメダイとは全体に赤く、目が金色をしているのが特徴で、成魚は水深200m~の深海に住んでいます。刺身、煮つけ、干物にしてもおいしい魚として人気です。一年中食べられる魚ですが、とくに冬は脂がのっておいしいとされています。
サクラエビは駿河湾の特産品として知られ、産卵シーズンの6中旬~9月などを除いた、3月下旬~6月上旬と、10月下旬~12月下旬に水揚げされます。日中は深海に潜む習性があるそうです。
【DATA】
キンメダイ
分類 キンメダイ科キンメダイ属
学名 Beryx splendens
生息地 日本周辺、東シナ海、大西洋、インド洋などの200~800mの岩礁域
サクラエビ
分類 サクラエビ科サクラエビ属
学名 Lucensosergia lucens
生息地 駿河湾、遠州灘、東京湾、五島列島沖、台湾沖などの水深200~300mの深海
食べ過ぎ注意!ハマりやすいアブラボウズ
「ほかにもメヒカリ、メギス(ニギス)、ノドクロ(アカムツ)、デンデン(オオメハタ)も人気が高い魚たちですね。脂がのっていておいしいんですよ。煮つけにしたり揚げたり、焼いたり。沼津ではさまざまな深海魚料理が楽しめます」(山口さん)。
なかなか魚屋さんで見ない希少な深海魚としてはアブラボウズがあります。体長は1m80㎝ほどの巨大魚で、見た目は迫力があるのですが、おいしいということで高級魚として扱われています。
「とても脂ののった魚で、クセの少ない白身魚で肉も柔らかいですね。おいしいにはおいしいのですが問題があって、脂肪分が多いせいで食べ過ぎると消化しきれずに下痢をしてしまう人が多いんです。でも分かっていてもついつい食べちゃうそうなので、機会があって食べるときは気を付けてください」(山口さん)。
【DATA】
アブラボウズ
分類 ギンダラ科アブラボウズ属
学名 Erilepis zonifer
生息地 日本、北太平洋、ベーリング海などの200~800mの岩礁域
フランス料理の高級食材も沼津港に水揚げされる
ほかにもフランス料理やイタリア料理でよく使われるアカザエビも深海の生き物です。海に生息するザリガニの仲間で、日本では駿河湾や東京湾などが産地となっています。
「アカザエビは料理店などではテナガエビとも呼ばれますね。やはり水深200m以上の深海に生息しています」(山口さん)。
伊勢海老と並ぶ高級エビでもあり、甘くてネットリとした身を持っています。ちなみに、テナガエビとは俗称で、標準和名のテナガエビとはまったく別物だそうです。
【DATA】
アカザエビ
分類 アカザエビ科アカザエビ属
学名 Metanephrops japonicus
生息地 銚子から日向灘の太平洋沿岸の200~400mの海底