海の上を走れる自転車道として、世界的にも人気が高いしまなみ海道サイクリングロード。本州の尾道と四国の今治を結ぶ全長約70kmのコースで、芸予諸島の6島を7つの橋と渡船で経由。変化に富んだコースの沿道では多島美の景勝をはじめ、当地ならではの歴史や文化、味覚などにふれながら、自転車でのアイランドホッピングを楽しめます。
出発地や旅程、テーマによって、様々なプランが組めるのも、このサイクリングコースの魅力です。まずはすべての島々を全走破するプランで、しまなみ海道の魅力を総チェック。尾道から今治への道中では大三島がほぼ中間点なので、ここで1泊するゆとりをもった行程でめぐります。
緩やかなアプローチを登っていざ橋の上へ
起点は尾道駅で、駅前のサイクリングターミナルで輪行してきた自転車の組み立てや、レンタサイクルの受付を済ませて出発。1島目の向島へは、駅前渡船を利用して渡ります。竜宮城へ向かうような派手なデザインの渡船で、造船所を眺めながら尾道水道を航行すると、自転車での島旅が始まる気分が盛り上がってきます。
サイクリングコースとなる道路は「ブルーライン」と呼ばれる、沿道に青色の塗色が施されているのが目印。向島へ渡るとしばらくは市街を走り、御幸瀬戸に突き当たると対岸に岩子島が迫ります。赤いアーチの向島大橋をくぐると布刈瀬戸が開け、因島大橋の優美な姿が。橋をくぐり南側から見上げる長礁鼻を過ぎたら、橋への上りへとかかります。
各島を結ぶ橋へのアプローチは、迂回しながら高さを稼ぐ仕組み。勾配は比較的ゆるやかで、島と島の間の瀬戸が次第に広がり、巨大な橋が目線の高さに迫ってくる風景は、このサイクリングロードならではのものです。因島大橋は橋長1270m、海面から58mの高さからは布刈瀬戸を挟んで、向島大橋のアーチや因島の大浜埼灯台を見下ろせます。
畑や集落など変化に富んだ島風景のなかを走る
因島大橋を渡ると、2島目の因島へと入ります。橋のたもとには展望台がある因島大橋記念公園、しまなみビーチが広がる因島アメニティ公園が整備され、売り切れ必至のはっさく大福の人気店・はっさく屋の店舗も。はっさく大福で糖分とビタミンをチャージしながら、公園で海風景を眺めつつ1回目の休憩に。
因島は戦国期の海賊・因島村上水軍が根拠地にした島で、造船でにぎわった歴史も。沿道には現在も、造船所のドックが見られます。重井の集落を過ぎると瀬戸越しに生口島が近づき、高速船がときおり間近を航行。交通量が増えてくると、斜張橋の生口橋が頭上に迫ってきます。橋へのアプローチの途中の展望広場からは、斜面に広がるミカン畑がのどかな雰囲気です。
サンセットビーチの黄昏がじわり心にしみる
生口橋は橋長790m、海面からの高さ35mとしまなみ海道の橋の中では低めで、両側に島が迫るため瀬戸はまるで川のよう。対岸は3島目の生口島で、北岸をたどっていきます。向かいに佐木島が近づいてくると、瀬戸田の市街へ。耕三寺の門前町でもあり、「しおまち商店街」を抜けていくと昭和の空間にタイムスリップしたような懐かしさを感じます。
高根島を向かいに眺め、再び海に面した道路に出ると、サイクリングロード屈指のマリンビューの区間へ。沿道にはパームツリーの並木が続き、南国風な風景が続いていきます。瀬戸田サンセットビーチは名の通り、夕日がすばらしい景勝地。サイクリングターミナルも設置されているので、ここで2回目の休憩に。黄昏時に差し掛かる時間なので、暮れゆく瀬戸内海の穏やかな海風景を少しばかり眺めていきましょう。