古くから食材として親しまれてきた野草。そんな豊かな「大地の恵み」に目もくれず、素通りしてしまうなんてもったいない! 目を凝らすと、野原や道路脇といった身近なところに美味なる野草が潜んでいます。野草研究家として活躍する、「ハーブ王子」こと山下智道さんに、春に食べたい野草を教えていただきます。第1回目はノビルです。
都会でも遭遇確率が高いネギのような野草
葉の部分はネギ、根元の白い鱗茎がタマネギのような形状のノビルは、3月〜5月にかけて旬を迎える野草です。
北海道から沖縄まで全国的に広く分布しており、日当たり良好、かつ水はけのよい川原や草地によく生えています。自然あふれる場所にわざわざ出向かなくても、砂利道やあぜ道でも見つけることができるので、気軽に出会える野草といえるのではないでしょうか。
何本かまとまって生えているため見つけやすいのですが、摘む前には葉の形を必ず確認しましょう。
「葉っぱがストロー状になっていて、断面が三日月型であればノビルです。見た目が似ている毒草もあるので、しっかりチェックしてください。スイセンやツルボ、タマスダレなどが間違いやすいと思います。ポイントは葉が空洞かどうか、です」
食欲をそそる、あの薬味みたいな香り
ノビルの葉をちぎってみると刺激のある香りが漂います。まるでネギかニラのような、馴染みのある独特の香り。これは、ノビルがネギ、ニラ、ニンニクと同じネギ属の植物だからです。ちなみに、先述のよく似た毒草のスイセンの葉からはこの刺激臭がしないため、見分けるポイントとしても活用するといいでしょう。
採取するときは、土に近い茎部分を持って引っこ抜いてもいいのですが、地面が硬いと途中で茎が切れてしまい、鱗茎が土の中に残ってしまうことも。そんなときにはスコップやシャベルの出番。ノビルの脇に深く差し入れて、すくうように持ち上げてみましょう。10cm程度を目安に掘り上げると、根まで届きます。