埼玉県中部にある標高876mの堂平山(どうだいらさん)。その山頂に、美しい星空とダイナミックな関東の夜景の両方を楽しめる「堂平天文台・星と緑の創造センター」があります。昭和から平成にかけて、国立天文台として実際に観測が行われていた貴重な場所で、かけがえのないひとときを味わってみませんか。
天体観測の最前線だった堂平の天文台
堂平山に天文台が建設されたのは1962年(昭和37年)。東京大学東京天文台の観測所として開所し、のちに国立天文台・堂平観測所となりました。東京から近いこと、そして冬の晴天率が世界有数という点が決め手だったといいます。
堂平観測所には、当時としては国産で最大の口径をもつ91cm反射望遠鏡が設置され、多くの研究者が観測に訪れました。開所した当初、宿泊するための施設はなく、研究者たちは91cm反射望遠鏡のあるドーム内で睡眠も食事もとったそうです。
その後、流星や人工衛星、月、彗星を観測するため各種施設が建設されたものの、高度経済成長により都市に街灯やネオンサインがあふれ、急激に夜空が明るくなりました。
東京に近かった堂平観測所の観測環境は、悪化の一途をたどります。また、ハワイに設置された世界最大級のすばる望遠鏡が本格的に稼働したこともあり、2000年(平成12年)に閉所することになりました。
91cm望遠鏡で楽しむ宿泊者限定の星空観察会
長きに渡って日本の天文学を支えてきた堂平観測所。閉所から5年後、「堂平天文台・星と緑の創造センター」として新たなスタートを切り、現在に至ります。
施設の目玉は、なんといっても使用されていた観測所ドームと口径91cmの反射望遠鏡でしょう。現在は宿泊者限定で、毎月第2、第4金曜日に星空観察会を開催しています。巨大な望遠鏡を覗くと、木星の縞模様や土星の輪までしっかりと確認できます。
そのほかにも季節に応じて、北天でいちばん美しいといわれるヘルクレス座の球状星団(M13)や、オリオン座にある有名な散光星雲、オリオン大星雲(M42)といった、大型望遠鏡だからこそ楽しめる天体も観察できます。
観察会以外の日でも、晴れていれば美しい星空が頭上いっぱいに広がります。有料で双眼鏡の貸し出しも行っているので、ぜひご利用下さい。
また、周囲に視界を遮るものが少ないため、昼間の眺望も素晴らしいと評判です。天文台の観測所ドーム駐車場に設置された双眼鏡タイプのコイン式観光望遠鏡を覗くと、都心のビル群や、東京湾を行き交う船舶まで見ることができますよ。