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慌ててかきむしったり触ったりするべからず! 身近な猛毒生物の〝生態と対策〟【vol.03 イラガ・チャドクガ・オオムカデ】

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  • イラガの幼虫

キャンプなどのアウトドア活動時だけでなく、庭仕事をしているときや公園で遊んでいるとき、さらには屋内にいるときにも、刺されたり咬まれたりする危険性のある毒虫がいます。

決してこちらを狙って襲ってくるわけではありませんが、うっかり近づいたり触れたりしてしまうと痛い目に遭い、その毒に悩まされることになります。

今回は、街なかでも出会う可能性のある危険生物について、野外における危険生物対策研究や指導を専門に行う、一般社団法人セルズ環境教育デザイン研究所の代表理事所長、西海太介(にしうみだいすけ)さんにお話をお聞きしました。

触るとビリビリ! 激痛を引き起こすイラガ

日本全国に分布するイラガの幼虫は、強い痛みを与えられる、毒をもったガの仲間です。大きさは3cm前後で、サボテンのようなトゲがある姿が特徴。サクラやウメ、カエデ、ケヤキ、ヤマボウシ、カキ、クリなどさまざまな樹木で、初夏から秋にかけて発生します。

「イラガの『イラ』はトゲのことです。人間が街路樹として植える木にいることが多いので、山よりも街なかのほうが出会いやすい毛虫です。サクラやケヤキはよく道路脇や公園に植わってますし、カキやカエデ、ヤマボウシは庭に植えることも多いですから」(西海さん)

イラガには、ヒロヘリアオイラガ、ナシイラガ、アカイラガなどたくさんの種類がいて、それぞれ利用する木が異なるそうです。

「一部の種類を除いて成虫やマユに毒はありませんが、幼虫のトゲに刺されると、ビリビリとした強い痛みが表れます。腫れやアレルギー性のかゆみが引き起こされますが、痛みについては数十分~数時間以内など、比較的早くおさまるのが特徴です」(西海さん)

襲ってくることはないので、刺されるのはうっかり触れてしまったとき。まるで電気が走ったかのような痛みなので、「電気虫」とも呼ばれています。

「独特な卵型のマユが枝や幹についていれば、その木でイラガが発生したかどうかが分かります。7~10月ごろ、イラガが食べる種類の木を眺めてみて、マユや茶色く食われた葉っぱがある場合も要注意です。木登りや剪定、腰を下ろすなどの際に、何もいないことを確認しましょう」(西海さん)

風にのって飛んでくるチャドクガの毒針毛

毒のある毛虫としてイラガと並び称されることの多いチャドクガは、ふわふわした毛に覆われたガの幼虫。本州、四国、九州に分布し、チャノキ(茶の木)につくことからこの名前があります。

「イラガとチャドクガは特徴が対極的なところが多いので、セットで覚えるとわかりやすいですよ」と西海さんは言います。

「イラガはいろいろな木に寄生しますが、チャドクガはツバキ科の木にしか寄生しません。また、イラガが初夏から10月ぐらいまでの年1回発生するのに対し、チャドクガは6月と10月ごろの年2回発生します」(西海さん)

さらに、イラガは一部を除き幼虫のみに毒がありますが、チャドクガは卵もマユも成虫も毒をもっているのだそうです。

そして最大の特徴が、直接触らなくても被害を受けること。

「幼虫の長い毛ではなく、黒い模様の部分に長さ約0.1mmの毒の毛「毒針毛(どくしんもう)」をもっていて、これが風に吹かれて飛び、刺さります。刺されると数時間以上たってから、赤い発疹やかゆみの症状が現れます」(西海さん)

これらの点も、触れない限り被害に遭わず、刺されてすぐに症状の出るイラガとは対照的です。

「刺されたとき、イラガは痛いですが、チャドクガはかゆいんです」(西海さん)

被害に遭わないためには、発生時期とツバキの木を認識しておき、不用意に近寄らないことが大事です。

一方で、イラガもチャドクガも、刺された場合の応急処置法は基本的に同じ。

「かくと広がるのでかいてはいけません。まずは粘着テープで体や服についた毒針毛を除去し、患部を水洗いしてから抗ヒスタミン軟膏を塗ってください。チャドクガの場合は、針のついた服を洗うとほかの洗濯物に移ることがあるので、注意が必要です。服にアイロンをかけるか、沸かしたお湯をかければ、熱で無毒化できます」(西海さん)

毛虫の毒はタンパク毒のため、熱で変性します。これを知っていれば、二次被害を効果的に防ぐことができそうです。

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