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たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記【vol.12】湯が真っ黒⁉︎ 山奥の秘境に湧く秘密の隠れ湯「奥日影の湯」/長野県

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  • 奥日影の湯
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「野湯(のゆ)」とは、自然の中で自噴していて、それを管理する商業施設が存在しない温泉のこと。「日本国内にそんな所が存在するのか?」と思う人もいるかと思うが、じつは人知れず湧出している野湯は全国各地にある。この連載では、野湯マニアの著者が入湯した、手つかずの大自然の中で格別の満足感を味わえる野湯を紹介してゆきたい。

今回は、長野県の山奥に湧く〝黒湯〟「奥日影の湯」を訪れる。

山奥の秘境に密かに湧き続ける野湯

信州北部、高山村の奥深い山の中。村の中央を流れる松川渓谷沿いには8つの温泉が点在している。その中でも最奥部の群馬県との県境に位置する温泉が、7本の源泉がブレンドされているという七味温泉である。そして今回の野湯探訪の目的地は、七味温泉のさらにその先。山奥の秘境にひっそりと湧いているという「奥日影の湯」だ。

昭和の頃、山地図にはこの「奥日影の湯」の地点に温泉マークがあり、10人くらいが余裕で入れる石で作った湯船があったそうだが、平成に入ってからはそのマークは地図から消失し、湯も涸れたとされていた。しかし実際には完全に涸れてはいなかったようで、現在でも密かに湧き続けていたのである。

噂では、どうやらその野湯はかなり山奥にあって、なかなか見つけられないらしい。どことなく忍者の秘密の修行場所のようなところを想像したが、一体どんなところにあるのだろうか。

「幻の野湯」に後ろ髪を引かれる

今回は、七味温泉を起点にして、万座温泉につながる林道を遡っていった。

この林道山田入線は、台風や豪雨で崖崩れや崩落を繰り返し、現在は通行止めのままで復旧の目途は立っていないようだ。

歩き始めるとすぐにゲートがあり、車両は入れなくなっていた。そのゲートを越えて松川渓谷沿いに登っていくと、あちこちで崖崩れの跡があったので、乗り越えながら歩いてゆく。

廃道化している林道を緩やかに登って高度を稼いでゆくと、眼下の松川の対岸の崖の下に、少し黒っぽいガレ場を遠目で見つけることができた。そこはかつては「日影の湯」と呼ばれた幻の野湯が存在した場所である。しかし現在、湯はほとんど湧いておらず、野湯として湯船に浸かることはできないらしい。崖を降りて捜索したい想いを振り切って先を急いだ。

しばらく進むと、林道から左斜めに細い登山道が谷へと向かっていた。そちらに入っていくと道はかなり荒れていて、ほとんど人も歩いていなかった。

想定していた場所に野湯がない!

国土地理院の地図ではこの道は破線のルートとなっている。人一人がなんとか通行できるような、足先のおぼつかない道を下ってゆく。ルートを見失わないように数百メートルほど行くと、松川に合流する渋沢からの流れの沢筋に突き当たった。

沢に降りるには、2~3mの崖を下らねばならない。木の根や草を掴みながら一苦労しておりたが、少し先にその崖に架かった壊れかかったハシゴを見つけた。崖を降りる前に見つけたなら、そのハシゴで簡単に降りられたのに、ちょっと損した気分になった。

おそらく、この付近から松川の河原にかけてのどこかに奥日影の湯があるはずだと睨んで、ヤブコギをしながら渓流沿いを進む。ところが、温泉らしきものが一向に見当たらない。

松川の谷を上流へ、そして下流へ、右岸も左岸も苦労して隈なく探し回った。しかし、見つからない。

匂いなどから温泉の気配はするのだが、しばらく探し回っても痕跡すら発見できなかったので、一旦この場所は諦めて、はしごで崖を登って細い山道へと戻った。

熊に怯えながら引き続き野湯を探索

来た道を少し戻ると、最初来たときには気がつかなかったが、字が読み取れないほど朽ちかけた木の看板があった。そこから谷へ向けて僅かに誰かの踏み跡がついていて、先に続いているようだ。この踏み跡の方へと向かってみるが、実質的にヤブコギに近い状況で、気を抜くと踏み跡を見失いそうである。

こういう見通しのきかない道では、いきなり熊と遭遇するリスクもあるので注意が必要だ。熊対策として、大きな声を出しながら進む。

倒木を乗り越え、ヤブをコギながら下ってゆく。慎重にルートファインディングして、ようやく松川の河原に出ることができた。狭い川幅の荒れた河原である。先ほど野湯を探していた場所から、100mほど下流になるようだ。

どっちに進むべきか迷ったが、何となく「上流の方ではないか?」と野生の勘が働いたので、それに従って探索を開始する。

少し進むと、対岸の川岸に横倒しになった土管が見えた。こちらの土管は昭和にはあったであろう湯船の一部かもしれない。

さらに探し歩くと、目の前に大きな岩が現れた。そしてその岩の袂をみると、直径1m弱の湯だまりを発見!

ようやく見つけた! と思って手を入れたら……。

ぬるい。おそらく30度もないだろう。

湯だまりの深さも十数センチほどで、快適な入湯は厳しそうだ。

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