アウトドアでは必然的に昆虫と出会う機会が多くなります。昆虫少年や虫愛ずる姫君じゃなくても、昆虫って観察してみると意外とかわいらしく見えてくるものです。
このシリーズではそんな、ちょっと気になる虫たちについて、昆虫の専門家にお話をお聞きしていきます。
かつてないほどの猛暑の夏となりましたが、ようやく少し秋めいてきましたね。うるさいほど鳴いていたセミに代わって、秋の虫たちが涼しげな声を聞かせてくれています。
今回はそんな〝鳴く虫〟について、兵庫県の伊丹市昆虫館の坂本館長に教えていただきました。
日本の秋を風流に奏でる〝鳴く虫〟たち
〝鳴く虫〟といえば、夏のセミもそうですし、バッタの仲間など、数多くいます。
その中で、秋を感じさせる涼やかな美声の持ち主と言えば、コオロギ、マツムシ、スズムシあたりが思い浮かぶのではないでしょうか。
清少納言が書いた『枕草子』の第43段では、〝鳴く虫〟として、スズムシ、マツムシ、キリギリス、ハタオリが紹介されています。
当時は、美しい声で鳴く虫を探し出して宮中に献上する「虫選び」、捕らえた虫たちを庭に放って鳴き声を楽しむ「野放ち」、虫がいるところへ出かけて行く「虫聞き」と言った遊びが盛んだったそう。
秋の鳴く虫を楽しむのは、古くから続く日本の伝統文化だったんですね。
街中や都市近郊で出会える鳴く虫の代表・コオロギ
「遠出をせずとも出会える可能性が高い鳴く虫といえば、コオロギが挙げられるしょうか。この時期、街中でもよく聞く、〝リ・リ・リ・リ……〟という声は、ツヅレサセコオロギです。市街地の植え込みなどにもよくいます」と坂本さん。
なんだか不思議な名前ですが、実は「ツヅレサセ」は漢字で書くと「綴れ刺せ」。衣類のつくろいをするという意味で、この虫が鳴き始めたら冬が近づいてくるので、冬用の着物のつくろいをして寒さに備えよ、と言う意味なのだとか。