北海道の東・知床半島。海から陸・山へとつながる生態系が評価され、2005年7月に日本で3例目となる世界自然遺産に登録されました。自然豊かな知床エリアは、同時に「ヒグマの棲みか」とも呼ばれる世界的に見てもヒグマ密集地帯でもあります。
山頂から海岸線までヒグマの棲息密度が高い場所
1988年設立、35年に渡っての知床の野生生物の保護管理・調査研究、森づくりなどの活動を行ってきた団体が公益財団法人「知床財団」。電話取材を申し込んだその日だけでも、目撃数は8件。「ヒグマが現れたというよりも、そもそも山頂から海岸線までヒグマのいる所ですからね」と、スタッフの新庄さんは話します。
知床半島は長さ約70km、幅約20km。この範囲に500頭くらいのヒグマがいるのではないかと推測されています。そしてこのエリア斜里町・羅臼町に住む住民は約1万7000人。そこに、年間120万人以上の観光客が訪れます。ヒグマとの距離が近いことはいうまでもありません。
世界遺産・知床が行うクマ撃退スプレーのレンタル
知床財団では「ヒグマとの軋轢の大半は、人間が気をつけることで回避可能」という考えのもと、関係行政機関などによって作成された「知床半島ヒグマ管理計画」に基づき、さまざまな対策を行っています。
例えば花火(動物駆逐用煙火) などによる追い払い、出没地点周辺の調査、誘引物除去、電気柵の設置・メンテナンス、注意喚起看板の設置や知床自然センターなど施設における情報提供から、地元住民への情報提供や地元児童・生徒への「ヒグマ授業」まで、あらゆる対策を講じます。
そのうち観光客に対するユニークな取り組みのひとつが、クマ撃退スプレーのレンタルです。