アウトドアでは、必然的に昆虫と出会う機会が多くなります。昆虫少年や虫愛ずる姫君じゃなくても、昆虫って観察してみると、意外とかわいらしく見えてくるものです。
このシリーズではそんな、ちょっと気になる虫たちについて、昆虫の専門家にお話をお聞きしていきます。
今回は、昆虫好きの間で断トツの人気を誇る、カブトムシとクワガタムシについて、橿原市昆虫館の学芸員・池田さんにお話をお聞きしました。
昆虫界の不動の人気者ツートップ
昆虫展などが行われると、きまって目玉となる「ヘラクレスオオカブト」。さすがカブトムシの王様といった風格で、高い知名度を誇ります。
一方、日本のクワガタムシの王様といえば「オオクワガタ」。こちらも、とくに男の子を中心に大人気で、ヘラクレスオオカブトに負けず劣らずの存在感を放っています。
カブトムシとクワガタムシは、「かぶくわ」などとひとまとめにされがちですが、分類的には少し違うカテゴリーの昆虫です。
「どちらもコウチュウ目(鞘翅目)ですが、カブトムシはコガネムシ科、クワガタムシはクワガタムシ科に分類されています」と池田さん。
名前はいずれも、戦国時代に武将が身につけた「鎧兜(よろいかぶと)」に由来しています。カブトムシは兜に似ているから、クワガタムシはあごの形が兜の装飾品である「鍬形(くわがた)」に似ていることから、その名がついたそうです。
「かぶくわ」を見つけたいなら森へ行こう!
カブトムシもクワガタムシも、専門の販売店まであり、なかなかの価格で取引されていることから、簡単には見つけられない希少な存在だと思いがち。でも池田さん曰く、ちょっとした郊外の森でも、案外いるものなのだとか。
「虫捕りをしたことがない人は、はじめはなかなか見つけられないかもしれません。でも、カブトムシやクワガタムシが好む場所を知って、そこを重点的に探してみると、発見率が上がりますよ」と池田さん。
では、カブトムシやクワガタムシは、どういった場所を好むのでしょうか。
「どちらも、成虫は夜にどんぐりの仲間(クヌギ、コナラ、シラカシなど)の幹の、樹液がしみ出しているところに集まります。
暑い夏の昼間は、日差しのないところで休んでいて、涼しくなる夜や明け方に活動します。身体が黒いので、ひなたで動き回るのには適していないのです。
また夜に活動するのは、鳥などの捕食者に狙われないようにするためでもあります」(池田さん)
幼虫を見つけるなら朽ち木をチェック!
「もし森の中で朽ち木を見つけたら、ぜひ、その下を見てみてください。もしかしたらそこに、カブトムシやクワガタの幼虫がいるかもしれません」
木が枯れて倒れると、はじめにタマムシやカミキリムシなどの幼虫がやってきて、頑丈なあごで、その木をかみ砕いて食べるそうです。
次に来るのがクワガタムシの幼虫、そして分解が進んで腐葉土に近い状態になってくると、カブトムシの幼虫が集まってくるとのこと。
「昼間に森の中で朽ち木を探し、ついでに樹液が出ている樹を見つけておけば、夜にカブトムシやクワガタを観察しに行く際の目安になりますね」