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たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記 【vol.09】海から野湯が出現! 式根島の「山海温泉・奥ふなりっと温泉/東京都

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  • 山海温泉 奥ふなりっと温泉
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「野湯(のゆ)」とは、自然のなかで自噴していて、それを管理する商業施設が存在しない温泉のこと。「日本国内にそんな所が存在するのか?」と思う人もいるかと思うが、じつは人知れず湧出している野湯は全国各地にある。この連載では、野湯マニアの著者が入湯した、手つかずの大自然のなかで格別の満足感を味わえる野湯を紹介してゆきたい。

今回は、東京都にある野湯天国、式根島の山海温泉と奥ふなりっと温泉を訪れる。

式根島は東京都の野湯パラダイス!

東京都港区の竹芝埠頭から、高速船で約2時間半、大型客船で約9時間の船旅で到着する小さな島、式根島。コバルトブルーの海が印象的なこの島は、東京都にある野湯のパラダイスである。島の南側の海岸にはいくつもの温泉が湧いており、魅力的な野湯がたくさんあるのだ。

今回は竹芝埠頭から高速船に乗り、島の北側にある式根島の玄関口、野伏港へと到着。

目当ての野湯へ向かうべく、島を縦断して南へ2kmほど歩いていくと、漁湾である式根島港が見えてきた。なんとこの港の底からも温泉が湧いているというから驚きだ。

西側対岸にある短いトンネルをくぐり抜けると、いくつかの人工の露天風呂を見つけた。しかし目的地はここではないので、その先にあるコンクリートで固められたシングルトラックの細い道をしばらく進んで、磯浜のなかへ入っていく。

岩々を越えて海岸沿いに行くと、大きな石に「山海温泉」と書いてあった。

今回入りたい温泉はここだが……肝心の温泉がなかなか見当たらない。

それもそのはず。じつはここ、満潮の時には海に水没し、潮が引くことによって次々に湯船が出現する、アメージングな野湯なのである。

潮の満ち引きによって温泉が次々に出現!

山海温泉は満潮に近づくにしたがって少しずつ海中に沈んでしまうため、普通に入湯するのであれば、干潮時に訪問するのがおすすめだ。

しかし、今回はあえて干潮ではなく、満潮から潮が引いていく時間帯に訪れた。潮の引きが大きいタイミングであれば、次々に湯船が出現していくのを目の当たりにできるからである。

潮が引いてくるとまず最初に、岩盤がU字谷のように削られた湯だまりが現れた。泉質は硫化鉄泉で、色は茶褐色。少し手を入れてみると、源泉は激アツだった!

海岸のあちこちで湧き出している源泉は80℃くらいあって、海水と混ざり合わないと熱すぎて入湯できない。この湯だまりには海水があまり入っておらず、あまりに熱いので入湯は諦めた。

このU字谷は段になっていて、もう少し潮が引くと、二段目の湯船が現れ、そこは適温でゆったり浸かることができた。さらに潮が引くと、その下から石を積んでお湯をせき止めた、三段目の湯船が出現。

その下にもまださらに湯船があって、潮が引くにつれて次々と現れていく。上からの源泉が流れ込んで湯船にたまっているが、それぞれの湯船の底からもお湯が湧出しており、海岸全体が大きな源泉地帯になっていた。

これらの湯船は、湯温も水量も潮の満ち引きだけでなく、波がくるたびに常に変化する。大きな波がきて海水が増えるとぬるくなり、波が引くと熱くなったり。式根島では「湯加減は潮がする」といわれるが、まさしくこのことだ。これぞ、海の野湯の醍醐味である。

いい湯加減の湯船を探し求めて、次々に入湯。下に行くほどに海面に近づき、眺めがよくなっていく。

ほどよい波の揺れを感じながらの温泉に浸かると、どこか夢心地な気分だ。

ちなみにこのあたり一帯の海岸には、全部で大体10個ぐらいの湯船が現れるそうだが、波で運ばれる小石でだんだんと埋まって浅くなってしまったり、台風などで海が荒れると湯船が破壊されてしまったりする。そして次々に訪れる野湯マニアが湯船をつくり、また少しずつ増えていくのだ。

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