近年ニュースで頻繁に報じられるようになった、クマの市街地出没や人的被害。2021(令和4)年、北海道における熊害(ゆうがい)事件数は、統計を取り始めた1962(昭和37)年以来、最多となりました。
北海道以外の山中や市街地でも、クマの目撃情報などが増えている今。アウトドアを楽しむとき、自然のなかに入っていく人間側が不用意にクマと出遭ったり、襲われたりしないために、どのような注意が必要なのか、クマ研究の専門家である山﨑晃司先生に伺うシリーズの第2回目です。
人がクマに不用意に近づくことを避ける
前回は、季節に関係なく「どんなに身近な森でも、そこに入ったらクマはいる」という意識を持つことを学びました。クマは臆病な動物で、人間を恐ろしく思っています。至近距離での遭遇はクマのほうも驚き、逃げるか、または恐怖を排除しようとするか、そのときのクマの判断によって人が受ける被害の大小が変わってきます。
一昨年、札幌市では市街地のすぐ近くの山で冬眠中のクマ穴に人が近づき、襲われた事例がありました。人がクマに不用意に近づくことはできるだけ避けるべきです。
「山の中で、人がクマに襲われ食害に遭う事故は歴史的に何度も起きていますが、クマはもともとの祖先の肉食から、植物質に偏った雑食に進化してきています。植物質が中心ですが、消化器官は肉の消化もできるので、アリやハチなど社会性昆虫なども食べますし、森のなかでシカやイノシシなどが死んでいれば当然食べるでしょう」
「人の熊害事故の場合も、積極的に殺して食べる例もないわけではありません。しかし、突発的に人と出遭い防御的攻撃が原因で殺してしまったあと、考え方がスイッチして獲物として認識し、食べる。ということが多いのではないでしょうか?」と山﨑先生は言います。
森へ行くときは「ここに人がいます」とクマに知らせる
それでは森のなかへ人が入るとき、どのような対策をしたらよいのでしょうか。まず、もっとも大切なことは「クマに人の存在を先に知らせること」。それはクマ鈴、笛、声などの音を出して存在を知らせることです。周囲に迷惑をかけない範囲で、そして自分が不快に思わない程度で音を鳴らし「ここに人がいます」と知らせることです。クマが人に気づかない状態でばったりと遭ってしまうことが最悪です。
その意味でいうと、強風や強い雨の音などの悪天候、川の流れの音が大きく、クマが人に気づきにくい場合はとくに要所要所で人が音を出して歩くことです。