アウトドアでのアクティビティや自然の知識を身につけると、外での活動がより楽しくなります! この連載では、そんな、ためになる本を古今東西問わずに取り上げます。今回は、森の小径を歩いているとふと目に入る、こもれびの中で美しい緑のじゅうたん「コケ」について学べる一冊。
屋久島や八ヶ岳など、コケの美しさで人気の高い山も多くありますが、意外と身近なところにも存在しているようです。足元に広がる美しきミクロの世界。それは未知のワンダーランドかもしれません。
ルーペ片手にコケに見入る「コケ女」が増殖中
山道のみならず、公園や神社、お寺の庭などで、しゃがみ込んで熱心にコケの観察をしている人を見かけたことがあるでしょうか。筆者の周りでは、ここ7、8年ほど、コケが大好きという「コケ女」が増えてきた印象があります。うら若き女性が、地面にへばりついていったい何をやっているのか……と、最初は驚いたのですが、ルーペを覗かせてもらうと、なんともいえない美しい世界が展開しているではありませんか。
遠目にはただのモフモフのじゅうたんにしか見えないコケですが、近くで見てみると色鮮やかな緑が美しく、まるでミクロの森のよう。胞子体がすっくと伸びている姿ときたら、たまらない愛らしさです。
「原子的な陸上植物」といわれる所以
コケの名所として有名なところといえば、屋久島が筆頭でしょうか。屋久杉の原生林を彩る美しい緑のコケが目に浮かびます。あるいは、ヒカリゴケで有名な八ヶ岳?
本書では、屋久島や奥入瀬のほか、「コケの専門家が選んだコケがすごい場所!」と題して、日本全国のコケの名所を一覧で紹介。ほかにも、身近な場所、たとえば街中や公園、社寺、里地里山などでコケと出会うポイントなどもまとめてあります。
分類学においてコケは、「コケ植物」「コケ類」「蘚苔類(せんたいるい)」などと呼ばれており、世界には約1万8000種以上あるそうです。
「原始的な陸上植物」といわれていますが、水中で光合成をしていた藻類から分かれて、最初に上陸を果たしたのがコケ植物。その後、維管束と根を発達させたシダ植物が現れ、花粉を飛ばして受精させる仕組みを確立した裸子植物が現れ、花びらのある花を咲かせて果実の中にタネをつくる被子植物が現れます。だんだん複雑に進化したスタイルを持った植物が登場する中、からだのつくりも、生活史も、イマドキ風にすることなく生きています。完全に陸上生活に適合しているとは言えない部分もあるため、「植物の両生類」と呼ばれたり、「下等植物」と言われてしまうこともあるのですが、驚くほどの生命力を持ち、なかなかに謎めいて面白い存在なのです。