どこの国にも属していない、地球上で5番目に大きな大陸。定住者はおらず、ほぼ手つかずの大自然が残る場所───。こう聞いて、あなたはどこを思い浮かべますか?
その答えは「南極」です。
厚い氷に覆われ、最低気温−89.2℃を記録したこともあるという、地球上で最も寒い地域。そんな過酷な土地へ、日本から派遣されているのが南極観測隊(正式名称は南極地域観測隊)です。
限られた人しか足を踏み入れることができない大陸へ、隊員たちはどのように行き、どんな場所で生活しているのでしょうか。極寒の世界、南極での彼らの活動内容をご紹介します。
日本の南極観測基地は全部で4カ所
南極について何も知らないという人も、「昭和基地」の名前は聞いたことがあることでしょう。南極大陸から約4km離れた東オングル島に、1957年(昭和32年)に開設された日本の観測基地です。
南極観測隊の第1次隊が建設した当初はわずか4棟だった建物も、現在はおよそ60棟に拡大し、1年を通じて運営されています。この場所で、夏には最大100人程度、冬には30人程度が活動しています。
昭和基地のほか、南極大陸にみずほ基地(閉鎖中)、あすか基地(閉鎖中)、ドームふじ基地(夏基地)があり、以上の4つが日本の南極観測基地です。
これらの基地を維持管理し、調査隊である南極観測隊を編成・運営しているのが、大学共同利用機関の国立極地研究所。これまでに南極や北極で多くの発見をし、科学の進歩に貢献してきました。
さまざまな分野のスペシャリストが集結する観測隊
南極観測隊は、現地での滞在期間が異なる「夏隊」と「越冬隊」、そしてそれぞれの「同行者」で編成されています。南半球にある南極の季節は日本と真逆。一晩中明るい白夜が続き、比較的暖かく天候も穏やかな1月を中心に、約2カ月間南極に滞在するのが夏隊です。
その一方で、1年を通して滞在するのが越冬隊です。南極の冬は、太陽が昇らない極夜(きょくや)が約1カ月続き、ブリザード(激しい吹雪)が吹き荒れ、昭和基地では平均気温が−20℃になるなど、想像を絶する厳しさです。
しかし、夜空を舞うオーロラなど、南極ならではの光景に遭遇するチャンスがあるのも越冬隊の特権です。同行者とは、観測事業の発展や観測事業に関する国民の理解増進のために、南極観測隊に同行する人のこと。新聞社やテレビ局の記者が同行することもあります。
また、夏隊、越冬隊ともに、隊員はその役割によって大きく「観測系」と「設営系」の2つに分かれています。観測系は、観測や調査、研究を目的とする研究者等で構成されます。一方、設営系は基地の維持や機械の整備、医療、調理などを担当し、基地を運営することによって観測系を支える隊員のことです。
人が定住していない南極だからこそ、さまざまな専門技術をもつ人が、お互いに助け合って暮らしや安全を守っているのです。