兵庫県三田(さんだ)市の「三田八景」のひとつに数えられる有馬富士は、その秀麗な姿から全国に数あるご当地富士のひとつで、標高はわずか374m。山麓の公園からなら1時間ほどで登れるお手軽山ではありますが、山頂からは三田市の市街地はもとより、遠く播磨地方まで見渡すことができる絶景の山です。
花山天皇が退位後に隠棲した地
有馬富士の北東には、NHKの大河ドラマ『光る君へ』で俳優の本郷奏多(かなた)さんが演じた花山天皇ゆかりの地があります。
出家して帝の座を退いた若き法王が隠棲したとされる場所が「花山院菩提寺」というお寺。法王を慕って、都からはるばる訪ねて来た女官たちが近くに住んでお世話をしようと、黒髪を切って住みついたとされる場所が、「尼寺(にんじ)」という地名として残っています。
有馬富士の周辺は、雲海が見られる場所として知られていますが、花山法王がその光景を詠んだ歌がこちら。
有馬富士 ふもとの霧は 海ににて 波かと聞けば 小野の松風
さて、登山の起点となるのは、兵庫県立有馬富士公園です。
有馬富士と福島大池をメインに、周辺の丘陵地一帯も含めた広大な自然公園です。園内を貫く北摂里山街道の南側ゾーンには、この地域に伝わる民話をテーマにした遊具がある「あそびの王国」があります。ネコ耳みたいな巨大オブジェは「鬼ヶ富士」という遊具で、まずはこれに登頂します。
鬼ヶ富士の上に登ると、ちょうど正面に有馬富士がそびえています。霧が立ち込める日には、山が雲海に浮かぶように見えるのだとか。
このオブジェは、地域に伝わる鬼伝説のお父さんの頭をモチーフにしています。遊具なので、登るための階段があり、頂上は展望台。そして滑り台が2つあって、滑って降りることもできます。これがなかなかの迫力で、ためしに滑ってみたのですが絶叫を響かせてしまい、周りで遊んでいる子どもたちに笑われてしまいました。
ほかにも、鬼の食卓をモチーフにした遊具や、音の出る巨大な楽器、太陽光を反射する鏡板があるなど、自然を生かしたわくわくする遊び場となっています。でも、いつまでも遊んでいないで次の山に向かわなければ……。園内を通り抜けて、登山口へと向かいます。