登山活動中に食べる「行動食」にはどんなものが適しているのかを解説する4回目です。今回は、食材の腐敗・変質のリスクについて、また季節による適性などを考えてみます。
1回目の記事でフルーツを持っていく話を紹介しました。丸ごとで皮をむいていないフルーツは、比較的傷みにくいものです。しかし、まるごと1個のメロンやスイカは、距離の長い山行には通常不適。途中で割れたら大変なことになるし、そもそも重すぎます。食べたあとの生ごみも困りもの。常識的な人は、山にそういうものは持っていきませんよね。
カットフルーツなら、そのまま食べることができてごみも出ないし、適量を持っていけますが、気温によっては傷んでしまう可能性があります。このように、同じ食品でも、形状や状態によって、適・不適はさまざま。季節(主に気温)によっても条件は大きく変わります。
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行動食の優等生「おむすび」について
炊いたコメを食べやすい塊にしたものが「おむすび」ですが、製造過程や包材、具材などによって、保存性が大きく変わります。炊き立てのあつあつごはんを、ちょっと塩をつけた手でふんわりとむすんだ塩むすびの美味しさは、日本人に生まれてよかった……と思えるものですが、それを山に持っていくのはNGです。
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コンビニ等で売られている市販品のおむすびは、きちんとした衛生管理の下で作られているはずなので表示されている「消費期限」と、携行時の温度に配慮すれば比較的安全と考えられます。
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しかしながら、夏でなくても、日差しがきついとき、たとえばバックパックの後ろから日が当たり続ける向きで歩いていると、中は意外な高温になることがあるので注意が必要です。
そして、問題は自家製おむすびの場合。いくらきれいに手を洗っていても雑菌が付着しがちなので、素手で作らないのが基本。あたたかいごはんで作ることが多いので、わずかな菌が増殖してしまうこともあります。手が直に触れないようにラップなどを使って作り、完全に冷ましてからパッキングするようにしましょう。
腐敗を防ぐ効果があるとされている梅干しを入れたり、酢飯にしたりすると、多少の防腐効果が得られるかもしれませんが、過信は禁物。筆者がよくやる「究極のずぼら飯・容器に詰めるだけごはん」も、素手を使わないので比較的衛生的ではないかと思っています。
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また、逆に寒い季節の場合、長時間持ち歩くとおむすびは固くなってしまうことがあります。数日間に渡る雪山山行の場合、筆者は当日昼くらいまでに食べきる分はおむすび、翌日はパン類、3日目以降はエナジーバーや焼き菓子などをチョイスします。
初日に食べるつもりでうっかり忘れていたおむすびを、翌日食べようと思ったら、完全に凍っていて食べられなかったことがあります。水分量が多い食品は重いだけでなく、気温が高いと腐敗リスクが低温化では凍結リスクがあります。
重くても活用したい「フルーツ」の優秀さ
フルーツは水分が多く、食材としては重いものですが、速攻でエネルギー源となる果糖を多く含むほか、ビタミンやミネラルも摂れ、疲労回復に役立つクエン酸たっぷりのものもあります。さわやかな甘さと酸味で、バテ気味で食欲がないときにも食べやすいものです。
そのまま皮をむいて食べられる温州ミカンは行動食に最適なフルーツ。バナナも、バックパックにそのまま詰め込むと傷みやすいものの、糖質やカリウムを多く含んだ優秀な行動食です。100円ショップなどで売られている専用ケースを使うのも手。皮のまま食べられるブドウをシール容器に入れていくのもおすすめです。
皮をむいたりカットしたりしたフルーツは、切り口から傷みやすいので注意が必要です。暑い季節なら一口大に切って冷凍し、保冷剤とともに保冷バッグに入れていくと、シャーベットのようで美味しくいただけます。
凍らせてもすぐ溶けてしまうような時期には、パウチ容器に入ったフルーツゼリーなどがおすすめ。凍らせてほかの食材の保冷剤代わりに使うという裏技もあります。
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近年の猛暑対策に大きな保冷ボトルが活躍
猛暑の頃にやるのが、大きな保冷ボトルに、チューブ入りの氷菓や、一口サイズのフルーツゼリーを凍らせたものを入れていくというもの。オーバーヒートしそうなときに凍ったものを摂取すると効率的に身体をクールダウンできますし、暑熱障害のリスクがあるときに、凍らせた食材をタオルでくるんで頸部を冷やしたりする使い方もできます。
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熱中症対策に有効とされているシャーベット状飲料「アイススラリー」なども携行できますので、危険なレベルの暑さの時には活用してみてください。
筆者が愛用しているのは、クラフトビールを量り売りで買うための「グラウラー」というボトル。かなりかさばるのが難点ですが、たっぷり入るので複数名で行動するときの対策には重宝しています。
近年は夏が暑すぎるので、猛暑の季節は想像以上に食品の腐敗が進みやすいと考えた方がいいですね。気温が高い季節は、水分量が多い食品など、菌が増殖しやすいものは避けて、パワージェルやゼリー飲料など、密封された製品などを主にするのがいいかもしれません。