全国で約21万カ所も存在する、ため池。そこから農林水産省が厳選する「ため池百選」に、和歌山県で唯一選ばれているのが、海南市阪井に位置する「亀池公園」です。その規模は県下最大級。農業用水の確保を目的として造られた貯水池ですが、現在は県立公園として地域の人々が憩い、約4kmにわたる外周は遊歩道になっています。
ハイキング歴20年以上の母とビギナーの私で、秋の亀池公園を1周する約1時間30分の散策をしました。本記事では、紅葉が彩るコースの序盤を綴った別記事の続きを紹介します。
石橋を渡って鬱蒼とした森の中へ
亀池公園は、江戸時代の治水家かつ紀州流土木工法の始祖とされる、井沢弥惣兵衛(やそべえ)によって1710年に造られました。その功績を称え、亀池公園の堤防の先には石碑が建てられています。その石碑の隣に架かる小さな石橋。鬱蒼とした森に吸い込まれるように石橋を渡ります。
この日は平日だったので、さっきまでちらほらとあった人影が一気になくなり、「イノシシ注意!」と書かれた看板に出会い、なんだか不安になる母と私。ほどなくして、背後からジョギング姿の女性がやってきて、ホッとひと安心して細い山道を譲りました。
しばらくすると、分岐が現れました。右のルートは池の外周。つまり、予定の遊歩道コースですが、山を上っていくような左のルートは何だろう……..?
当然のように右の階段をくだる母の背中に「ちょっとだけ見てくるわ!」と言い残して、早足で左のルートを駆け上がっていきました。
竹やぶの中に亀池辨財天
進むほどに竹やぶのトンネル。ふかふかの腐葉土が雪のように積もって、数少ない足跡らしきくぼみが稀に見つかるといった具合で、人がほとんど通らない道だとよくわかります。
荒れ果てた「亀池辨財天(べんざいてん)」の入り口が現れ、ちょっと不安になりながらも、竹やぶの先がどうなっているのかが気になって奥へ奥へ。すると、リンリンリン! 急に携帯電話が鳴ったので、思わずドキッ!
電話に出てみると「名前を呼んでも返事がないし、どこまで上っているのよ~。そろそろ、もとの道に戻っておいで」と母。そこで引き返し、もとの分岐で合流しました。
遊歩道からは先ほどの竹やぶを見上げる格好になるため、名前を呼ぶ声が聞こえないくらい上っていたんだなと実感しました。ちなみに、遊歩道は池の外周に沿っていますが、柵はほぼなし。稀にある木製の柵には「老朽化のため、使用の際は十分注意してください」の貼り紙がセットになっていました。
亀池の隣にある新亀池
木漏れ日が綺麗な小道を進むと、堤防の上にポツンと置かれたベンチ。その向こうに、隣接してもう1つ池が現れました。地図アプリで確認したところ、ここは「新亀池」。1931年に亀池の水量を調整する目的で造られた池だそうです。
新亀池の堤防の先には「亀池不動明王」が祀られていました。本来はベンチの右手に進むルートが亀池公園の遊歩道コースですが、せっかくなので、新亀池に少し寄り道。
見事な紅葉も拝み、新亀池の堤防を引き返していると、「こっちにも道がある!」と母がベンチの脇を指差しました。先ほどの竹やぶルートの出口がここに繋がっていたのです。
なるほど~と思いつつ、今度は亀池の堤防を進むと「黒龍大明神」と「にこにこ稲荷大明神」の祠があり、またルートが左右に分かれています。
ちょうど通りかかったウォーキング中の男性に尋ねたところ「亀池不動明王の前を通って新亀池も1周できるんですよ。サクサク歩けば30分もかからないかな。左の道がその出口。右の道は、亀池の遊歩道コースです」と教えてくれました。