神奈川県を代表する観光地の三浦半島は北に逗子市と葉山町、中央部に横須賀市、南端に三浦市の4市町の層で構成されています。鎌倉、湘南とはまた空気感を異にする独特な、ゆったりした自然を感じさせる海街です。ハイキングコースも自然溢れるコースが東西に横断する三浦アルプスと、南北に半島の背骨を構成する三浦富士ルートが走り、四季を通じて低山ファンに愛されています。
三浦富士でもなく三浦アルプスにもない三浦半島最高峰
三浦半島には先述のように三浦アルプスと三浦富士の2大人気ハイキングコースがあります。三浦アルプスは葉山町から横須賀市の田浦町、安針塚にかけての浅間山・阿部倉山・二子山・乳頭山・畠山の5座が連なる縦走ルートです。一方の三浦富士は半島南端側にある津久井浜から三浦富士・砲台山・武山を繋ぎます。ですが三浦半島の最高峰は三浦の富士山ではなく、三浦アルプスにもありません。三浦アルプスと三浦富士の間にある山で、標高241mの大楠山です。
大楠山一帯は風致地区として保護されており、手付かずに近い豊かな自然が残っています。山頂からは相模湾から富士山や東京湾をも望むことができます。
登山口は意外に多く、芦名口、前田橋、阿部倉、衣笠、湘南国際村の5カ所からのルートになります。もっとも至近なのは湘南国際村からのコースで、スタンダードかつ人気なのが前田橋バス停からのルートでしょうか。このうち、芦名口、前田橋、湘南国際村の3ルートは山頂手前で合流します。
葉山の海の陽光を受けて目指す大楠山登山口
芦名口、前田橋、そして湘南国際村のいずれも最寄駅となるJR逗子駅ないしは京浜急行線逗子・葉山駅からバス利用で登山口まで。低山ハイクのメリットの一つに公共交通利用の利便性が挙げられますが、この3登山口ともに葉山の海からの陽光を受けながらのバス旅が楽しめることも人気の理由かと思います。ただ、マイカー派には駐車スペースがあるのは湘南国際村ルートのみになります。
ここでは前田橋ルートと湘南国際村ルートをピックアップします。まず前田橋ルートですが、同バス停先の住宅街に入る路地に踏み入ります。踏み入ってすぐに遊歩道との分岐のあるお国橋に突き当たります。前田川遊歩道になります。階段を降りると飛び石段が続きます。この飛び石ポイントからが素敵な自然歩道の時間を送ることができると思います。せせらぎや終点付近にある堰堤の滝壺をじっくり見渡せば小魚や沢ガニなどを見ることができるやもしれません。
遊歩道終点からの登山道は登り始めは丸太階段が続きますが、全体に鎌倉アルプスや三浦アルプスに似たテイストを漂わせる、木々に覆われた静かなトレイルです。250mに至らない低山とはいえ、部分的には急登部もあるので足もとへの留意は怠れないと思います。
登山道から白い鉄塔が見えたら大楠平休憩所です。山頂施設のトイレはここ数年使用不可状態なので、極力こちらで用事は済ませておきましょう。取材時は休憩所自体も閉鎖されていたようです。
この先の階段を上った先が山頂です。神奈川の景勝50選の一つです。ビューハウスは完全閉鎖されており、展望台に立つことも叶わなくなっているのが残念です。その分、寛ぎやすいようにベンチも多数設置されているので、ランチやティータイムには困らないかと思います。