冬の至福といえばコタツで食べるみかん。日本におけるみかん発祥の地は、和歌山県の北西沿岸部に位置する海南市下津町(しもつちょう)とされています。
毎年11~12月頃は、みかんの収穫最盛期。海沿いの山肌を覆う石積みの段々畑がみかん色に染まります。みかん畑に囲まれながら旧熊野街道を渡って熊野古道を登る「橘本(きつもと)神社~御所の芝」の低山コースがあるので、ハイキング歴20年以上の母とビギナーの私で、往復2時間30分の登山をしてきました。
みかんの歴史に触れる低山コース
熊野古道にはいくつかのルートがあるのですが、今回のコースは紀伊路の一部にあたります。私たちのお目当ては熊野三山ではなく、今がまさに旬のみかん畑。スタート地点として選んだのは、みかんの神様を祀る橘本神社です。ゴール地点として、藤白峠を越えた先にある標高約290mの景勝地・御所の芝を目指しました。シンプルに表現すれば、紀伊路の一部を逆走+寄り道して、みかん畑を堪能するコースです。
いざ、ハイキングへ! というタイミングで気付いたのは、ウィンドブレーカーに帽子、首にタオルを巻いた母のいでたち。何より、そのパッションピンクの手袋はいったい……?
「山道を歩くときは木や岩を手すり代わりにつかむことがあるから、手袋をしていると何かと便利なの。リュックには水はもちろん、飴やチョコ、軽量のダウンベスト、水に流せるティッシュとかも入ってるよ」と、ドラえもんの四次元ポケットのように、小さなリュックから次々とアイテムを取り出す母。
宇多田ヒカルの懐かしのミュージックビデオ「Addicted To You」を彷彿とさせる手袋の色はさておき、70歳を超えても現役のハイキング好きは頼もしいなぁと思いながら、まずは橘本神社を参拝しました。
柑橘の神様を祀る「橘本神社」
橘本神社には、柑橘やお菓子の祖として崇敬される田道間守命(たぢまもりのみこと)が祀られています。西暦71年頃に、田道間守命が日本で最初となるみかんの原種・橘(たちばな)を下津町に植えたことから、下津町は日本におけるみかん発祥の地となりました。
ん……? 西暦71年!? 字面が見慣れなさ過ぎて、思わず読み飛ばしそうになりますが、つまり約1950年前! みかんの歴史は今も受け継がれ、みかんの収穫量全国一位を誇る和歌山県内でも下津町は屈指の産地となっています。
また、その橘の実を使って日本で最初にお菓子がつくられた歴史から、全国からこぞってお菓子メーカーやパティシエが参拝に来ているのだとか。