村上春樹原作の映画『ノルウェイの森』のロケ地として知られる峰山高原&砥峰高原。兵庫県のほぼまんなかに位置する標高約1000m前後の高原です。山上エリア一帯がなだらかな地形になっていて、広々とした草原に覆われた、楽園のような場所。冬はスキー場、夏は涼しく快適に過ごせるリゾート地としても親しまれています。
秋には一面が黄金色のススキに覆われて、非常に美しいのですが、夏の緑も爽やかで、心地よい景色が広がっていました。
この日は、山上へ突き上げる小田原川の上流部にある「黒岩の滝」の見物と、ついでにちょこっと水遊びで涼もうという計画です。
まずは、行きがけに地元の食料品店で行動食の買い出しを。姫路からつながっているローカル線・播但線「寺前駅」のすぐそばにある「寺前楽座 まちの灯り」というお店へ立ち寄りました。
手作り弁当などがいろいろあったのですが、手書きのイラストが面白い謎のお弁当に思わず引き寄せられてしまいました。「シークレット弁当」って……?
ワカメちゃんとタラちゃん、中身はどう違うのでしょうか……。
映画やドラマの名シーンが思い出される高原へ
山上は、下界より6℃ほど気温が低いので、街中は猛暑日でも爽やかな風が吹いていました。映画『ノルウェイの森』、『燃えよ剣』、NHKの大河ドラマ『軍司官兵衛』、『平清盛』など、多くの映像作品のロケが行われた場所として有名で、近年は〝映えスポット〟として人気なのですが、この日は熱中症警戒アラートが出され、お天気キャスターが「不要不急の外出を控えましょう」などと言っている影響か、人影もまばら。
秋のススキの季節には臨時バスが運行されたり、途中の道が渋滞するほどたくさんの人が訪れる場所なので、ちょっと意外でした。沢に一番近いパーキングもガラガラ。クルマを駐めて、滝への遊歩道へと歩きはじめます。
今回、この沢は初見なのですが、どうやら名所の「黒岩の滝」までは遊歩道が整備されているみたい。道標がしっかりつけられて、わかりやすそうな取り付きでした。
ところが……、下っていくと、途中からだんだん踏み跡が怪しい感じになってきて、道標もあまりありません。観光客、大丈夫か? 沢沿いに下るのかと思いきや、沢の本流からずいぶん離れて蛇行する道となり、ついに、元の沢は全く見えないエリアに。
3名パーティだったのですが、この沢は全員初見で、まったく土地勘はないので、GPSと地図を確認しながら進みます。地形図を見ると、左岸に「徒歩道」の線が書かれています。踏み跡は薄いのですが、それを辿って下り、適当なところから入渓することにしました。
ただ、地形を見たところ、その「徒歩道」と沢が接近していて、容易に沢に降りられそうな場所は限られていて、かなり下流まで下るか、滝からほんの数百mで入渓するかの二択。
せっかく来たんだから、たっぷり水と戯れたい気持ちと、程よく遊んで帰りにお風呂に入ってさっぱりしたい気持ちがせめぎあって……
いろいろ考えた末、「沢は短くてもいいから遡行後にお風呂に入って、地元名物の蕎麦も食べていく」という欲張りな作戦で行くことに。