長野県軽井沢町を拠点とし、エコツーリズムを理念に30年以上の活動実績を持つ団体ピッキオ。「100年先の未来に森と生態系を残す」「森の価値を高める」ことを目的に、ツキノワグマ保護管理活動やネイチャーツアーの企画・実施などを行っています。今回は人気のネイチャーツアーのひとつ「空飛ぶムササビウォッチング」をご紹介します。
夜の森で、皮膜を広げて滑空するムササビをウォッチ!
野生のムササビに会えるナイトツアーは国設「軽井沢野鳥の森」に隣接した「軽井沢星野エリア」が舞台。ここにあるピッキオの「野鳥の森ビジターセンター」が集合場所です。
あたりが暗くなった夕方過ぎ。日没の約30分後に、ムササビは穴を出て食事のために飛んで行く、その様子を観察するのがこの「空飛ぶムササビウォッチング」です。ムササビは⾷事、睡眠、移動のすべてを樹上で行う動物。多様で豊かな森が連続していないと安定して⽣息することができません。そのため、「森の連続性」の指標となる野⽣動物なのです。
ツアーはまず、ガイドによるムササビの生態に関するレクチャーからスタート。葉をかじった食痕や、スタッフが手縫いで作成したという実物大のぬいぐるみを見ながら、皮膜を広げたときのサイズ感を確認。「空飛ぶ座布団」と呼ばれるのが理解できます。
樹上⽣活をするために進化してきた体の秘密や、驚きの⽣態を学んだら、次に夕暮れ時の森に移動し、活動を開始するムササビを待ちます。このムササビウォッチングは、1995年から29年間実施しており、⻑年にわたる調査や観察経験の蓄積をもとに内容を構築しているので、⾼い⽬撃率を誇るのがピッキオの自慢。近年の⽬撃率は2021年96.05%、2022年96.89%、2023年の実績は97.8%です。
「ムササビノート」を活用して森のつながり、生態系を学ぶ
観察では、ムササビにストレスをかけないよう赤色のライトを照らします。ムササビは木の洞をねぐらにしますが、巣箱を利用することもあります。星野エリアには、ピッキオが観察用に設置した巣箱が13個あり、観察時はその巣箱に注目します。
基本的にはひとつの穴に1頭。または母ムササビと子どもたちが住み、ねぐらの場所は数カ所あって、日によって寝る場所が異なることもあります。
しばらくすると、大きな目をしたムササビがひょこっと顔を出し、あたりを伺う姿が。と思うと忍者のように樹の幹を素早く登り、樹上からジャンプ! ダイナミックな⾶⾏シーンを目の当たりにすると、思わず歓声が上がります。巣箱の中に⼩型カメラを設置しているので、ねぐらの中で、出かける準備をする様子もモニター越しに観察することができます。