「可憐な高山植物三昧! 初夏の花を愛でる山旅【秋田駒ケ岳編】」に続く後半です。秋田駒ケ岳の火山らしい真っ黒な砂礫地の中を横切る道を登りきると、唐突に植生が変わって、別世界へ出ます。
なだらかな斜面に伸びる一本の木道。その両脇を埋め尽くすように咲いている一面のチングルマ。そこに広がっていたのは、まるで絵画のような、美しい世界でした。
いろいろな花が埋め尽くすメルヘンの谷
この景色が見たくて、今回わざわざ梅雨時に東北までやってきたんです。通称「ムーミン谷」。メルヘンチックで美しい、広大なお花畑です。
この季節の主役は何といってもチングルマ。夏山シーズンに北アルプスなどに登ると、すでに花が終わって綿毛になっていることが多いのですが、今回はバッチリ開花期。しかも咲きはじめのフレッシュは花ばかりで、花もつぼみも超可愛い。
もっと標高が低いところでもたくさん見ましたが、ムーミン谷にもたくさん群生しているコイワカガミ。白のチングルマととてもよく似合うピンクの花がステキ。
チングルマと比べると小さくてあまり目立たないけど、目線を低くしてよく見るとたくさん咲いているヒナザクラ。サクラソウ科ならではの可愛らしさ。清楚な白が緑に映えます。
ふと見回すと、みんな地面に張り付くようにして写真を撮ってました。
ムーミン谷の牧歌的な美しさに、このまま通り過ぎてしまうのがもったいないなぁと思っていたら、仲間が虫よけネットを落としたというので、探しに戻って、二度美味しいお花畑でした。
ムーミン谷の中間地点付近に、駒池という小さな池があります。とてものどかな景色なのですが、じつはこのあたり一帯はカルデラの中なんです。
1970年の秋に女岳が噴火。噴出したマグマが、まるで巨大な打ち上げ花火のようなストロンボリ式噴火となって、ニュースをにぎわせたとか。比較的穏やかな噴火で、近くに小屋などもないし、人的被害も出なかったのが幸いでした。当時、珍しい火山噴火が見られるということで、周辺には見物人が繰り出して、一時的に観光スポットのようになったそうです。
激登りを経ていよいよ山頂へ
駒池を過ぎて、分岐を右へ進むといよいよ山頂への急登パートに突入します。この付近は、最近まで積雪が残っていたようで、雪解け前から雪の下で芽吹いていたと思われる、いろいろな植物の新芽が面白い姿を見せていました。植物って、日に当たって初めて緑色になるんですね。
春の訪れと同時に咲きはじめるスミレの仲間たち。スミレの同定はけっこうややこしいのですが、何種類かが咲いていました。
優美な紫色が印象的なシラネアオイもまだたくさん咲いていて、きつい登りのつらさを癒してくれました。
この付近が、今回の山行で一番きつい登りです。ゆっくりゆっくり、花や景色に癒されながら行きましょう。
振り返ると、南側に女岳の火口が見えました。ほんの50年ほど前にあの火口が噴火していたなんて……
山上部にある阿弥陀池。池のほとりに避難小屋があります。ちょうどお昼時で、たくさんの登山者が休憩していました。
前回来たときはココで想定外の吹雪になったのですが……。
今回は、お天気は大丈夫。前回、何も見えなかった山頂を目指します。