標高990mの倉岳山は派手さには欠けるものの、1000m以下のコンパクトな山でありながら登山の魅力を凝縮しているように感じます。隣の高畑山とのセット登山で縦走を楽しむ登山者の方も多いと思います。富士山との出会いを求めて静かな山行旅が、倉岳山スタンダードと言えるものかもしれません。
山梨百名山にリストされている隠れた名山
倉岳山へはJR中央本線・梁川駅からのルートか、反対側にある上野原市・浜沢からのルートのいずれかになりますが、どちらのルートから入山しても立野峠で合流し、そこからの急登アタックとなります。秀麗富嶽十二景の山々としてはそれなりの広さがある山頂にはベンチも置かれ、南側に富士山を望むことができます。空抜けの富士山の眺望は隣り合う高畑山のそれよりはダイナミックなもの。さすが山梨百名山に名を連ねているだけのことはあります。
梁川駅からは梁川大橋を渡り集落を抜けて、登山口石碑の先から入山します。この石碑はまだ新しいもので地の関係者の詠んだ和歌が刻まれており、「乳房恋ふ 母にも似た倉岳を里の子今日も 胸に焼き付け」とあります。
入山後しばらくは緩斜面が続き、月尾根沢沿いを数回渡渉して標高を引き上げます。要所要所にはピンクテープが巻かれているので、道迷いの心配はないと思います。樹林帯は静謐。倉岳山の特徴として、この樹林帯にあるトチノキの巨木があります。天空に向けて枝木を伸ばすトチノキの幹が、まるで人の表情のように映し出されて、それはそれで楽しいものかと思います。怒っているのか、驚いているのか、または泣き笑いにも見えたりするので、同行者と言い合いながらも楽しい時間かと思います。