富士山の山開きはじつは2日あります。一つは山梨県側で7月1日。そして7月10日に静岡県側のお山開きです。山梨県では富士吉田の北口本宮冨士浅間神社にて神事が執り行われ、静岡県は富士宮の富士山本宮浅間大社となります。例年通り、今年も6月30日は富士吉田の浅間神社にて開山祭前夜祭が開催されました。梅雨空の下、週末ということもあり、富士山登山安全祈願に内外から訪れた多くの観光客がお道開きを見守りました。
遠くから眺め拝む山から登山でお祈りする登拝の山へ
7月1日の山梨県側の富士山の山開き。富士吉田市ではこの日をお祝いして、毎年前日の6月30日に富士山開山祭の前夜祭が開かれています。この祭りには現役の富士講の方々を始め、地元市民らが集まってパレードを行い、神社にて大祓式とお道開きなどの古式ゆかしい神事が執り行われ、賑やかな夏山富士登山の開幕を告げるものです。
富士山は古来より山そのものが御神体として畏怖されてきましたが、平安時代の山岳信仰の普及とともに修験道が広まりました。富士吉田の浅間神社も788年に社殿が造営され、富士山の怒れる大噴火を鎮めるために浅間大神が奉られました。その後江戸時代には富士山も遠くから見て崇拝する山から登山によるお祈りという登拝が盛ったという歴史があります。
日本橋から続く古道の富士みちを辿る参拝者もいる
前夜祭の神事は、富士急行線富士山駅目の前の金鳥居市民公園から出発するパレードで始まります。同公園には先述のように富士講の方々や山伏、御師、北口本宮浅間神社の氏子総代などが集まります。富士講の方の中には東京・日本橋から大月市を経由して続く富士みちを歩いて来る方もいらっしゃるそうです。出発に際しては北口本宮浅間神社の神職からお祓いを受け、法螺貝を吹きパレードが始まります。北口本宮浅間神社までゆっくり30分ほど国道139号沿いを練り歩き、かけ念仏と法螺貝の音が、巨木が立ち並ぶ神社参道に響き渡ります。それはまさに荘厳なる響きです。
神社ではパレードの到着に合わせるように神楽殿で太々神楽奉奏が演じられ、境内広場では近隣の保育園児たちによる愛らしい踊りと富士吉田婦人会の踊りが代わるがわる披露され、訪れた観光者の心を安らげます。神社では神楽殿横で整然とパレード参加者が整列する列立の儀。そして人形が授与され穢れを祓い、茅の輪くぐりの夏越大祓えの儀式に移ります。パレード参加の全員で拝殿前に設置された高さ2.5mの茅の輪をくぐります。そして全員での昇殿後、クライマックスのお道開きの儀式となります。