秀麗富嶽十二景において、唯一他のどの十二景とも峰を繋げない奈良倉山。錦秋に輝く一座は、大月の山というよりも鶴峠を挟んで東に広がる奥多摩山系の山と思われているかもしれません。秀麗富嶽十二景への選定には紆余曲折もあったように思われます。それは選定を開始した1988年次のリスト五番は、じつは他の山が背負う予定だったという史実が残っていました。
松姫峠駐車場から僅か100mで秀麗富士の絶景が!
標高1349mの奈良倉山からの富士山の眺望は、もっとも富士山から離れた位置に立つだけに、さすがに秀麗富嶽十二景群のなかにあって圧力感に欠けるきらいはあるかもしれません。それでも富士山の優美さに陰りを一切感じることがないのも、この山頂の魅力なのかと思います。秀麗富嶽十二景の選定は1991年になりますが、それに3年先立つ1988年に提案された最初の山頂位置図には、この奈良倉山は記載されていませんでした。そして5番山頂の表記は、現在の4番山頂の笹子雁ヶ腹摺山に記されていたことが判明しています。大きな見直しで奈良倉山はリスト入りしたわけですね。
奈良倉山からの富士山の眺望は、山頂標識から離れた展望所と呼ばれるポイントから南の植林帯は、まるで富士山を見るためだけに植えられたように開けて、まさしく秀麗富嶽な画角を作り上げているのがわかります。美しく末広がりな姿を、マイカー登山派なら松姫峠駐車場から僅か100mそこそこで堪能できるのです。