飛びゆく雁が腹を摺るがごとく超えていく様からつけられたと言う山名が秀逸な雁ヶ腹摺山(がんがはらすりやま)は、山梨県大月市が認定した富士の眺めが美しい山「秀麗富岳十二景」の一番山頂に選ばれています。そして同じ一番山頂に登録されている姥子山(うばこやま)が峰を連ねています。公共交通機関利用ではちょっと難儀な2座をマイカー登山で堪能しました。
財布の中の英雄・雁ヶ腹摺山の絶景
秀麗富嶽十二景は大月にある山々の山頂から美しい富士山を眺めることができる12の山頂を大月市が選び、ネーミングしたものです。とはいえ、選定されている山は12座ではなく、トータル20座になります。理由は選ばれた1から12までの山頂に複数の山が名を連ねている番号があるためです。
その20ある山の中で一番山頂の誉れをいただいている山が「雁ヶ腹摺山」と「姥子山」の2山です。雁ヶ腹摺山は、その絵画情緒的な山名の響きといい、またその山頂からの富士山の美しさで500円札の絵柄に使われました。ちなみに当時の500円札の偉人は岩倉具視です。500円札が使われた1951年〜1983年までの約30年間、雁ヶ腹摺山は私たち日本人の財布の守護神を勤めてくれたわけですね。
雁ヶ腹摺山へは中央自動車道・大月ICから国道20号を経て真木小金沢林道を走り大峠駐車場へ。こちらの駐車場は十数台駐車が可能です。この大峠駐車場からも晴れた日には富士山に挨拶ができます。また駐車場には以前から簡易トイレが設置されていましたが、昨年末に男女別のバイオトイレにリニューアルされていました。これは嬉しいニュースです。そういえば、舗装荒れが目立った林道も、アスファルトの凹凸部が修復され走りやすくなっていました。令和6年の秀麗富嶽ファン、さらに増えそうです。
日銀も認めた絶景山頂、手前では南アルプスの秀峰も
大峠登山口の登山者カウンターをプッシュしていざ入山です。すぐにクマ笹ゾーンと水場。以前、初夏に登頂した際も豊富な水量だったことを思い出します。水場から先は緩急織り混ざった斜面を登ります。途中には斜面崩壊のためにかけられた橋や鎖場などがあり、登山道バリエーションは豊かで、難度も高くないので楽しめます。
山頂手前標高1840m付近で露岩の休憩ポイントに行き着きます。振り返ると絶好のパノラマビューなポイントです。広がる視界左手南方向に秀麗富士山。右手西側には塩見岳、悪沢岳などの南アルプスの南部群嶺が並んでいます。後ほど見る山頂からの景観には、この南アルプス群の眺望は得られないので、ここから見ることができるパノラマ景観は貴重だと思います。
そして登山道はカヤトの原に。初夏の緑豊かな笹のスロープも魅力ですが、雁ヶ腹摺山から見る富士山には、この冬枯れのカヤトの原の方が似合っているような気がします。