昔から「鶴は千年、亀は万年」と言われ、長生きするカメは幸福の象徴とされてきました。しかし、本当にカメは万年生きるのでしょうか。また、実際にはどの程度の寿命なのでしょうか。日本で貴重なガラパゴスゾウガメが見られる上野動物園・は虫類館飼育展示係長の高橋英之さんにうかがいました。
カメの寿命は大型になるほど長いものが多い
カメは万年と言われますが、実際にはどのくらい生きるのでしょうか。
「ゾウガメ類などは長いものになると100年は生きるんじゃないかと言われています。正確な記録はわからないのですが、オーストラリアには175年くらい生きたという話もあります」(高橋さん)。
ただし、一口にカメといっても種類によって平均寿命は大きく違い、ニホンイシガメなどは20~30年程度だそうです。一方、体が大きくなるカメには長生きする個体が多くいます。
「ウミガメの仲間は70~80年程度。ケヅメリクガメ、ヒョウモンリクガメなどゾウガメ以外のリクガメの仲間でも70年以上生きる個体もいますね」(高橋さん)。
絶滅危惧種とされるホウシャガメなども100歳を超える個体がいるそうです。
【DATA】
ホウシャガメ
学名Astrochelys radiata
分類 カメ目 リクガメ科 マダガスカルリクガメ属
分布 マダガスカル
日本にいるガラパゴスゾウガメは3頭のみ
カメのなかでも、ひじょうに長生きだとされているのがゾウガメです。
「上野動物園にはガラパゴスゾウガメというゾウガメがいますが、日本にいるガラパゴスゾウガメは3頭で、全部オスです。そのうち2頭が当園にいる太郎(タロウ)と亀吉(カメキチ)です」(高橋さん)。
太郎は1969年に上野動物園に来ていますが、その時点で既に大きかったので90年は生きていると推測されています。また、亀吉はそれより早く1960年に来ていますが当時小さかったので、現在は80歳程度と考えられています。
60年以上前に船に乗って亀吉はやってきた
「太郎はペルーの動物園から来ましたが、亀吉はガラパゴス諸島からやってきました。東京海洋大学の海鷹丸という実習船(現在は4代目)があるのですが、その船(当時は2代目の海鷹丸)が1959年に探検航海(実習航海)でガラパゴスに行ったときにもらい受けてきたのが亀吉でした」(高橋さん)。
そのときの航海で一緒に来日した他の生き物たち(貝類やウミイグアナなど)は、現在、東京海洋大学に標本として展示されています。唯一の生き残りが亀吉ということからも、ガラパゴスゾウガメが長生きだということがよく分かります。
ガラパゴスゾウガメの甲羅には2種類がある
ところで、一口にガラパゴスゾウガメといっても、個体によって甲羅の形は相当違うそうです。
「ゾウガメの甲羅は大きく分けるとドーム型と鞍型があります。サボテンなどの植物を食べるのですが、高いところの葉などを食べる地域のゾウガメは鞍型になったりしています」(高橋さん)。
鞍型の鞍とは馬などに使う鞍のこと。馬の鞍も馬の首にあうように、前が大きく湾曲していますが、ゾウガメの甲羅も、上に首を伸ばすことが多い場合には、ちゃんと甲羅が鞍型になっています。