『焚き火と道具』は、テレビや雑誌で活躍中の焚き火マイスター・猪野正哉さんが、愛用している焚き火道具について語り尽くした1冊。マイスターの使う道具にはそれぞれに物語があり、選んだ理由、気に入っているところ、手放せなくなったポイントがあります。
今回はそんな焚き火マイスター愛用の「あると便利な消火アイテム」について転載します。
帰宅時間を早めてくれる魔法の粉
焚き火撮影は夕方から夜にかけて行なわれることが多い。あたりが暗闇に包まれる前に終わらせないと面倒になるため、撤収作業はスピード勝負になる。
だが、焚き火を簡単に片づけることは難しく、つい気を使って「どうぞどうぞ、先に帰ってください。あとは任せてください」と撮影スタッフを先に帰らせてしまう。
現場に一人、取り残されると自問自答の時間が始まり、「俺はなにをやっているんだろう?」とリトル猪野と話し込んでしまう。焚き火のたびに毎回自分と向き合う時間は、正直、きつかった。
そして撤収して終わりではなく、そこから、借りた商品を掃除し、梱包し発送する。もうひと仕事あるのである。
ある日、テレビで『家政婦のミタ』を何気なく見ていたら、天ぷら火災の初期消火に重曹を使っていた。重曹が燃えると二酸化炭素が発生し、燃焼に必要な酸素をシャットアウトしてくれる。炎を消すというより、炎を押さえる感じだ。
「これは使える!」と、焚き火の消火用にも使うようになった。熱は残るが、明らかに消火スピードが速くなった。帰宅時間も早くなった。