マイナーなコースが多い六甲山北側斜面。その中でも「古寺山(ふるでらやま)」は訪れる人も少なく、いつでも静かな山歩きが楽しめるところです。地元有志が道の整備をしており、じつは歩きやすいエリアです。
平清盛が新都の守護寺とした大寺があった
六甲山の北麓を通る阪神高速道路7号北神戸線を走っていると、「からと西IC」と「からと東IC」の間に長いトンネルがあります。これが古寺山の山腹をブチ抜いて通っている「新唐櫃(しんからと)トンネル」。このトンネルを通った人の数はものすごく多いけど、山頂に行ったことがある人は、ものすごく少ないかも。
しかし、中世の頃には大きな寺があって、多くの堂塔が建ち並び、栄華を誇ったと伝えられている山なのです。ルートはいくつもあるのですが、この日は神戸電鉄六甲駅から歩くことにしました。
「六甲」という駅名は、ほかにも六甲山の南側を通る阪急電鉄神戸線「六甲」駅、その南側にあるJR神戸線「六甲道」駅がありますが、いずれも六甲登山口に近いという理由からついた駅名だと思われます。
神鉄のこの駅が「六甲」なのも、もしかしたら昔はここから山越えをするのが一般的だったのかな? と思ったりしますが、今はとくにメジャーな登山ルートがあるわけでもなく、登山者の姿もまばらです。駅から少し歩くと、「山王神社」という古社がありました。
「村社」と書かれていますが、かなり古い由緒があるようです。平清盛が奉納したと伝えられている神鏡、神刀二振が宝物としておさめられているのだとか。
ここから、神戸市内とは思えない、のどかな里山風景の中を登っていきます。住宅地のはずれまでくると、「六甲有料道路」という自動車専用道路とぶつかります。トンネルというのか、ちょっと不思議な地下道をくぐります。
これは一応トンネルっぽい作りですが、どう考えても下水路としか思えないような通路を通るルートもあります。そんなアプローチのわかりにくさも、マイナーエリアになっている理由のひとつなのかもしれません。
しかし、登山道は比較的よく整備されていて、地元有志がつけたと思われる独自の標識があちこちに。それによると、表参道、観音道、行者道、脇参道など、それぞれのルートに名前もつけているみたい。そのネーミングに歴史的な根拠があるのかないのかはよくわかりませんが。
急傾斜の尾根道を登っていくと、山頂に近づくほどに傾斜が緩やかになってきます。636mの山頂手前に花崗岩の巨岩がありました。
六甲山は、ほとんどが花崗岩でできているので、あちらこちらにこんな感じの巨岩が点在しています。古代の磐座(いわくら)だったり、その形状から連想される名前がつけられていたりします。古寺山の山頂には、「清盛の涼み岩」と呼ばれている岩があります。
この岩に腰かけて涼んだということらしいのですが、腰を掛けるにはちょっと大きすぎないかな。
手前の、ちょうど座れそうな小さい石には「修行岩」と札がつけられています。修行するにはちょっと小さすぎないかな? この名札、以前はなかったので、わりと最近誰かがつけたものと思われます。