広々とした平野部に、ぽつんぽつんと島のように低山が点在する播州平野。標高は低くても、平野部に位置するため、手軽に絶景が楽しめる山が多いのがこのエリアの特徴となっています。
そんななかでも、とくに景色のよさと、迫力ある岩場で知られているのが「播磨アルプス」と呼ばれている高御座山(たかみくらやま)。馬蹄形に稜線が伸びており、ぐるりと縦走もでき、ショートコースで山頂へ向かう道もいくつもあって、いろんなプランで楽しめる山です。
午後発で夜景を楽しむトワイライトハイキングへ
高御座山では2011年に山火事が起きて、多くの樹林が焼失。以来、木陰があまりないため、筆者にとっては暑い季節には登りたくない山になりました。しかし、近年地元ハイカーの間では「アサミクラ」「ヨルミクラ」というワードがよく聞かれるように。太陽が照りつける前の早朝や、日没後に登る人が増えたのです。最短距離で山頂へ登れる成井登山口からのルートなら、ほとんど階段なので、傾斜はきつくても暗い中で歩くにも安心感があります。
この日は、夕陽&夜景を楽しむため、あえて午後にスタート。最寄り駅であるJR曽根駅から最も近い「豆崎登山口」から歩き始めました。
駅から徒歩5分ほどのところに登山口があります。最もメジャーなのは、大きな無料駐車場がある鹿嶋神社の裏手からのルートなのですが、公共交通機関で行く場合、住宅街を30分以上歩かないといけないため、街中歩きで疲れてしまうのが難点。バスを利用する手もありますが、この日は縦走気分で駅近の登山口から歩くことにしました。
登山口から山に入ると、いきなり急な岩場となります。
わずかな登りで眺望が開けるのがこの山のいいところ。ふと北西側を眺めてみると、仁寿山(じんじゅさん)、小富士山、御旅山(おたびやま)などの山並みと、その右手奥には国宝で世界遺産でもある姫路城の白い姿も見えていました。
行く手には、これから越えていく山並み。このコースのハイライトともいうべき「百間岩(ひゃっけんいわ)」が見えています。100間の名前が本当なら、180m? 最大傾斜40度と言われている巨大な一枚スラブです。
見た目は迫力もあるし怖そうなのですが、フリクションのいい岩質で、適度に凹凸があるので案外サクサクと登れます。岩場の上からは絶景が楽しめます。
山頂を目指して、細かいアップダウンが続く稜線をたどっていきます。ふと南西側に目をやると、海が見えました。播磨灘に浮かぶ低い島影は姫路の沖合にある家島(いえしま)諸島。その背後にそびえている大きな島は香川県の小豆島です。
西の空は赤く染まって日没が近づいているようです。完全に日が暮れる前に山頂に着いておきたい。気合を入れて登っていきます。登って下って登って下って……案外長いんです、この稜線。
振り返ると、歩いてきた道が一筋の線になって見えています。播磨灘に沈みゆく太陽が反射して荘厳な光景。臨海工業地帯の煙突群も見えています。低山とは思えない眺望に目を奪われます。
山頂直下でついに太陽が没しました。背後には、歩いてきた豆崎登山口からの尾根がほぼ全部見えています。馬蹄形の2 / 3くらいを縦走した感じ。