鎌倉市の大船と藤沢市の江ノ島を結ぶ湘南モノレールの途中にある山あいに広がる一角は、西鎌倉と呼ばれ、同名のモノレール駅が地域の中心となっています。一帯は神奈川県道304号(腰越大船線)と32号(藤沢鎌倉線)と西鎌倉線が行き交い、人気観光地の江ノ島と結ぶ交通の要衝です。その県道304号沿いに、これまたマニアックな切通があります。
バスとモノレールでのアクセスで訪れる切通
県道304号は神奈川県鎌倉市大船と同腰越を結ぶ幹線路です。湘南の134号腰越海岸と横浜南部を結ぶため、都心部へ向かう国道1号線利用車両で週末ともなれば度々渋滞が起きます。その304号が県道32号と交差する鎌倉市手広の一角に、谷戸坂の切通(女坂)があります。
この手広地区を含む鎌倉市の深沢地区は鎌倉の北西側の入り口に当たります。手広はその中でも西端に位置し、古くから江ノ島に向かう古道が走っていたそうです。この古道を通すために岸壁を切り通したのが谷戸坂の切通(男坂)だそうです。残念ながら今では土砂崩れの懸念から通行止めとなっており、岩壁の高さ10mに及ばんとする立派な切通の造形はフェンスの隙間から覗き見ることができる程度です。
谷戸坂の切通は登山道にある男坂/女坂と同様に、厳しい急登/緩斜面の巻道の男女分けで命名されているようです。鎌倉市によると江戸末期の手広の村民が勾配を緩やかにするために切り下げ工事を行い、谷戸坂の切通(男坂)となった、いわば生活道路だったようです。市井の方の調べでは、どうやら県道304号沿いに建つ青蓮寺の敷地と繋ぐ古道だったという話です。鎌倉七口の切通と違って、たった一枚のフェンスだけで通行止めできる狭い道幅の説明がつきます。軍用や物流の政経要路ではなかったということでしょね。ちなみに鎌倉市は(男坂)を谷戸坂の切通と表記しています。