国宝級の価値を持つ場所、特別史跡。国内64カ所のうち、和歌山県で唯一選ばれているのが、和歌山市に所在する「岩橋(いわせ)千塚古墳群」。約900基が密集する日本最大規模の古墳群で、紀ノ川一帯を治めた古代豪族・紀氏の墓域だったのではともいわれています。
この保存・公開を目的に、1971年に県立の博物館「紀伊風土記の丘」が設けられました。ここには、標高約150mの丘陵を1周できる約3kmのハイキングコースがあります。
ハイキング歴20年以上の母、ビギナーの私、まもなく3歳になる息子で、そのコースを反時計回りに散策しました。この記事では、県内最大級の古墳である大日山35号墳にのぼった別記事の続きをご紹介します。
見事な石室が見学できる将軍塚古墳
丘と言っても、古墳の数が多いだけにもはや山。適度なアップダウンがあります。メインとなるコースは整備され、古墳を見学しようと脇の山道にそれても踏み固められており、どこも歩きやすい道です。
岩橋千塚古墳群のなかで、石室の内部まで見学できる古墳は14基。うち4基には照明が付いており、さらに資料館の受付で懐中電灯の無料貸し出しも行っているそうです。
石室公開中の14基のうち最大規模となるのが「将軍塚古墳(前山B53号墳)」。全長約42.5m・高さ約4mの前方後円墳です。コースの中間点を過ぎた頃に「将軍塚古墳 ここから約60m」の看板を見つけたので、ちょっと寄り道。
トンネル状の入り口を覗いてみると、真っ暗。トンネル内に、2分間だけ照明が点灯するスイッチがあったので、急に消えないよう母にスイッチの守りを頼んで、恐る恐る中へ。
内部は「岩橋型横穴式石室」と呼ばれる石棚・石梁(いしばり)を持つ造り。紀の川南岸で採取された結晶片岩が板状に加工され、大人の身長2倍以上の天井までびっしり積み上げられています。ショベルカーもクレーンもない古墳時代に、この技術はすごい……!
紀の川と和泉山脈を望む展望台
もとのコースに戻り、ほどなくして紀の川と和泉山脈が見渡せる展望台が現れました。母は「今までここが、紀伊風土記の丘で一番の眺めだと思っていたよ」と、先ほどの大日山35号墳の眺望の素晴らしさを改めて噛み締めていました。
息子は、またもや花より団子。展望台のベンチに座って早めのお弁当を食べる老夫婦を見つけ、じぃ~っと羨ましそうな視線を送っていました。「ゴールしたら美味しいものを食べようね」と息子の背中を押して、先へと進みます。