最高峰からのプチバリエーションは?
一行は、931mの最高峰まで登り、みんなで記念撮影。一軒茶屋まで戻って魚屋道で有馬へ向かう計画なのですが、山頂で藤木常務が北面へ続くちょっとしたバリエーションルートを下ることを提案します。
先ほど、槇さんがガイドした「ちょっとベテランルート」がみんなにウケたので、今度は妻鹿さんに花を持たせてやろうとしたのです。
最高峰の広場は、数年前に景観伐採が行われて、すっきりと眺望が開けています。また、最高峰直下にトイレと休憩広場が整備されたことに伴い、北側に新しい登山道が開かれました。
それ以前は、このあたりから北面の白石谷へ下るかすかな踏み跡が続いていたのです。本書の描写は、その踏み跡を辿ったのではないかと思います。
<わッ! と前方で声がして、誰かが足を滑らせたらしい。
「妻鹿さん、ちょっとペース速いですよ!」谷口さんの声がした。最後尾についた松浦さんの顔は見えないが、その表情は強張っているに違いない。確かに踏み跡はある、なのでここもルートなのかも知れないが、そもそも登山地図に載っていないような径を歩いても良いのだろうか。>
ここで描かれているルートを辿ってみようと思って、筆者も行ってみたのですが……。
「山頂広場の奥」から北へ下り、隈笹に膝が埋まるような斜面から傾斜の強い木立の中を下り、踏み跡もないヤブをかきわけて、「土手を踏み越えると登山道へ出た」とあるのですが、具体的にどこを通ったのかはわかりませんでした。でも、魚屋道へ合流して、そこからは一般ルートで有馬温泉へ下りるので、おそらくこのあたりかな? と推測しながら歩きました。
六甲山には、「登山地図に載っていない道」は無数にあります。
行政が整備を行っている正式な登山道のほかに、無数の踏み跡があるのです。藪の中にうっすら、獣道と見分けのつかないような踏み跡も多く、どこまでを「登山道」と言えばいいのか、誰にも線引きはできないのが現状です。
そういうルートを専門に登っている「バリ」屋の妻鹿さん。
「やっぱアカンねんて、こういうの!」と非難する松浦さん。
そして謎めいたソロ登山者である妻鹿さんは、とても気になる存在です。
本書には、そんな妻鹿さんが休みごとに実践している「バリ山行」に、波多さんが頼み込んで連れて行ってもらったコースもあるので、こちらもまた別の記事で紹介します。