まるで絵画のように池に佇む双青閣
遊歩道を歩いていると、時折り木々の隙間から池が見えました。紅葉の美しさも相まって、その景色はまるで額縁に飾られた絵画。角度によって、池の中島に建つ国登録有形文化財「双青閣(そうせいかく)」が、額縁の中央に収まります。
水辺に佇む悠々たるその姿を絵画に例えるなら『モナ・リザ』。クラシック音楽でも流れてきそうな気分! ……だったはずの私の耳に届いたのは、池の対岸にある多目的広場でギターを掻き鳴らして往年の歌謡曲を歌い上げる年配の男性の声でした。
「池が静かだから、こんなに遠くまで聞こえるんだね。あ、知ってる曲だ」と70代の母が曲名を言い当てる一方で、30代の私はさっぱり。突然のイントロクイズに完敗しつつ、さらに道を進んでいきました。
最後の坂を上がった先に
後半になるほど、遊歩道はくねくねと曲がります。「遊歩道(矢印付き)」と「イノシシ注意」「老朽化により注意」といった看板はときどきあるものの、それ以外は案内がないため「この道いつまで続くの?」と母は不安そうな声で何度も尋ねてきました。
「地図アプリで見ると、もうすぐ車道に出るはずなんだけど」と答えた直後、ラストスパートと言わんばかりに、ぐっと伸びた坂道が登場。上がった先に、予想通りの車道が現れました。
閑静な住宅街と森に挟まれたアスファルトの道を進み、中学校と小学校の校舎が見えてきたところで、右手を覆っていた森の幕が開き、一面に亀池が現れました。
スタート地点に到達し、無事にゴールした私たち。母は「途中は不安で『もうこれっきりだわ~』なんて思ったけど、1周してしまえばいいところだね。起伏が少なくて日向と木陰がほどよくあって、心地いい散策だったわ」と楽しそうに話していたのでした。
【データ】
■亀池公園
住所:和歌山県海南市阪井806番地