茨城県日立市の神峰山(かみねさん)は標高598mの低山です。やや派手さに欠けるものの、日本の歴史上に重要な記述を残す山として知られています。光る海原が眼前に広がる絶景は、かつては黄色いガスが漂う集落の煙害との戦いと、住民への被害を無くすために往時の人智を超えた巨大煙突を立てた日立製作所の礎を刻んだ場所でもあります。
登山口からは30分で山頂へ! 道標も豊富で快適山行
神峰山は隣に居並ぶ高鈴山とともに、日立アルプスの主峰として知られています。日立アルプスへは公共交通ではJR日立駅から茨城交通バスで「ハイキングコース入口」か、「日鉱記念館前」下車の2通りと、マイカーで「向陽台駐車場」からの登山道利用の3パターンがメインルートかと思います。ここでは向陽台駐車場からのアプローチで神峰山頂を目指します。
向陽台駐車場は常磐自動車道・日立中央ICより県道36号を北上し、本山トンネルの先にあります。同駐車場は約30台近く駐車が可能な砂利敷で白線は引かれていません。ちなみに無料です。トイレはありませんが、高鈴山登山口脇に綺麗なトイレが用意されています。駐車場脇の旧道車両通行止めゲート脇から登山道入り口に進みます。駐車場で標高はすでに350m。旧道の緩やかなアスファルトの坂を登り、舗装が途切れたポイントが神峰山と高鈴山の縦走登山道になります。神峰山へは左手の登山口から。
いきなりの急登は、やや滑りやすい土質で注意が必要ですが、程なくして緩やかな登りに変わり、快適なトレイルが続きます。登山道にはかなり細かくルート案内標識が置かれているので、日立市公式の高鈴自然公園ハイキングマップに記入されている道標番号と照らし合わせながら進んで行けば、山頂まで30分強で行き着くことができると思います。途中には日鉱記念館への降り口もあります。降り口から同記念館までは往復で1時間弱。神峰山単体では物足りないと思うなら、寄り道して見学してもいいでしょう。
水戸黄門も登った山頂、領内一の日の出に黄門様、感激!
山頂手前に神峰神社。かつて麓にあった宮田村、助川村、会瀬村の鎮守の神社だそうですが、今でも地元住民が五角絵馬に願掛けされています。静かな森の神社は、言い伝えによると室町時代には祀られていたそうです。今では日立市宮田町の日立かみね公園近くの国道6号線沿いに本社が移され、山頂神社は奥の院として日立の街を見守っています。
この神峰神社から神峰山が日本史上に記録されるようになったのが、元禄8年(1695年)のこと。先の副将軍・徳川光圀公が上記3村の鎮守府に命じられ、同山頂に登り海から昇る朝日の美しさに「日の立ち昇るところ領内一」とたたえたそうです。この故事から日立の名が使われるようになったと言われています。黄門様が日立の名称と神峰山登山の第一人者というわけですね。
神峰山頂には神社の他にもう一つ歴史的建造物があります。古いプレハブ様式の白い平屋の建屋は気象観測所です。この気象観測所は、日本最大級企業の日立製作所の礎となった日立鉱山が建てたもので、歴史上でも小説世界でも、また映画といったエンタテインメントでも舞台にもなりました。