10年が経過し、今思うことは?
「絶対に噴火で死にたくなければ、火山に登らない選択しかありません」
噴火の可能性がある活火山に敢えて登るのであれば、それに備えた準備が必要です。それは、事前にその火山の活動状況を確認すること、もしも登山中に噴火が起きたらどう避難するのか、シェルターの位置や火口と登山道の位置関係を頭に入れておくこと。
安全対策のシェルターや情報提供があることは、安心ではありますが、安全とは違います。そのことは肝に銘じておかなければなりません。
そして、装備。日帰りであってもヘッドライト・防寒着・雨具、ツエルト(レスキューシート)そして少し多めの食料と水を持つことです。自力で歩けないようなケガをしたとき、救助されるまでに時間がかかることも考えられます。季節によっては保温が出来なければ低体温症で命を落とす可能性があります。これは火山だけではなく、どの山でも同じことです。
幸い私は、それまでの登山経験によって、ぎりぎりのところで命を守る行動ができたと思っています。もちろん運・不運はありますが、準備、装備、経験、そして危険に対する意識を持つことによってリスクを減らすことはできると思います。
絶対的な安全というものはない、自然相手の活動が登山なのだから、やるべきことをやった上で臨み、突然の噴火に遭遇したとしても、起こる全てを受け入れるしかないのではないでしょうか。それが自由に登りたい山に登ることと引き換えの、登山者の責任ではないでしょうか」と小川さん。
登山者のための火山のリスクヘッジ【現在日本にある火山と登山リスク編】、【活火山に登るための計画とは】、【噴火リスクがある山へ登るときの準備と対策とは】で、及川先生も強調されていたように、登山者自身がリスクを減らす行動を取ることが大切ということですね。油断することなく、これからも火山とどう付き合っていけばよいか考えていきたいと思います。
【取材協力】
■小川さゆり(おがわ さゆり)
長野県駒ケ根市出身、南信州山岳ガイド協会所属の信州登山案内人、日本山岳ガイド協会認定ガイド。友人が雪崩で命を落としたことをきっかけに、「山で悲しい思いをしてほしくない」という思いで活動している。著書に『御嶽山噴火 生還者の証言』(ヤマケイ新書)。※8月27日に増補・文庫版が発売されます。