ソトラバ

「本当にあった」に学ぶ、トレッキングの撤退ラインとは?「強風時の御嶽山登山」

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  • 雨の中登る人
  • ゴンドラ山上
  • 八合目女人堂
  • 濡れもの干し
  • 山頂付近からの眺望
  • 稜線上
  • 山頂
  • 晴れた山頂部を望む

先日、御嶽山へ行ってきました。昨年秋のルポ、霊峰・御嶽登山ルポ【前編】霊峰・御嶽登山ルポ【後編】でご紹介した通り、絶景テラスを期待していた「五ノ池小屋」で天気に恵まれなかったので、リベンジする計画です。人気が高すぎて予約困難、200回くらい電話をかけまくってようやく確保できました。

梅雨前線の動きが微妙で天気予報が二転三転

「活火山に関する情報」と併せ、気象情報も数日前からしっかりチェック。梅雨前線が東北付近にかかっていて、わずかな動きで予報が変わる微妙な状況。入山直前の予報では、初日は午後に少し雨が降るかも、二日目は概ねいい天気、という感じでした。ゴンドラ山上駅に着いたときは、雲は多いながらまずまずのお天気。

ゴンドラ山上

「さすがに涼しいね!」と、機嫌よく出発したのですが、10分ほど歩いたところでぽつりぽつりと雨が。下山してくる人たちがずぶ濡れなのを見て、上は風雨が強いんだろうなと思って、レインウェアを着用しました。

しばらくは深い樹林帯なので、風もなかったのですが、八合目を超えたあたりから、時折横殴りの風が吹き、雨もかなり強くなってきました。

八合目女人堂

「そんな降るとは聞いてないんですけど……」と思いながら、がんばるしかないので、黙々と登ります。気温も低く、風雨がきついので、レインジャケットのフードをかぶって、前ファスナーは首元まできっちり閉めていました。もちろんバックパックにはレインカバーをつけ、濡れると困るものが入っているサコッシュはバックパックに収納。

九合目を過ぎて、覚明堂の鳥居をくぐるところで、上から降りて来た若者と会いました。二人は青ざめた顔で、

「この先は風が強すぎて無理でした」
「え……? 稜線に出たら風が強いのは当たり前だけど、ムリって? いったいどんな風なんやろ?」

雨の中登る人

今回の一行は、3000m級の山は初めてというビギナーもいるし、本気の悪天は私以外誰も経験したことはないはず。ここまでの雨と風と寒さでそこそこダメージを受けている感じで、標高も高いので要注意な状況です。

稜線に出る手前で、
「五ノ池までは、無理かもしれない。けれど、明日は天候回復の予報だし、できれば二ノ池までは行きたい」と告げました。
もう急なところはないし、二ノ池なら好天時は15分もあれば行ける距離です。しかし……

稜線上は爆風地獄だった

覚明堂の上の階段を登りきると、ほぼ平坦でだだっ広い山上部へ出ます。西側の斜面が途切れたとたんに、風上側に向かって体重を乗せないと足をすくわれるレベルの強風が……

レインウェアに当たる雨も、水滴じゃなくて霰(あられ)じゃないのかと思うほど、痛いレベルで吹き付けています。二ノ池までは、距離は短いけれど、視界も悪いし、なにより風が強すぎる。このメンバーで進むのは危険と判断。20歩も進んでないけど、「引き返します!」

緊急避難所状態の山小屋のありがたさ

せっかく登ってきた道をひきかえし、覚明堂の下にある石室山荘へ。

「悪天で先へ進めないので泊めていただけませんか」と聞いてみました。
「そういう方が今日はたくさん来られていて、食材が足りなくて通常の食事が用意できないのですが、それでもよければ」とのこと。
一同、「屋根と壁があるだけで充分です!」

みんな手がかじかんで、濡れたレインウェアや、靴を脱ぐのが困難。低体温症の一歩手前の状況です。引き返していなかったら、致命的な事態になっていたかもしれません。

6名ほどの登山者が先着していたのですが、全員ずぶ濡れ。干してあるレインウェアも帽子も手袋も、すべての衣類から水が滴っていました。

濡れもの干し

お宿では、土間の両脇に濡れたものを置けるようにブルーシートを敷いてくれていて、炭火を起こしてくれていました。みんな靴の中まで濡れてしまったようで、中敷きを出して干してる方も。
結局、予約の方が4名、悪天のため急遽逃げ込んできた人が6名。
五ノ池小屋には本当に申し訳なかったのですが、撤退を決めてすぐに電話で事情を伝えました。
「どうぞお気をつけて」と心づかいの感じられるご対応でした。

夜中も風の音がうなりをあげていましたが、山小屋の中は本当に快適。山小屋ってありがたい!
そして、朝起きたら天候回復。晴れてる!

山頂付近からの眺望

ぬくぬくあったかい布団で眠ってる間に、濡れものもすっかり乾きました。とりあえず山頂を踏み、時間に余裕があるので、お花畑を見るために五ノ池まで足を伸ばすつもりで出発しました。

「夏でも寒い」御嶽山はホントに寒かった

昨日、ガスでまわりが見えなかった稜線は、天候回復ですっきりとした景色。この場所が、昨日は爆風地獄だったとは。山の天候の激しさは、本当に想像以上です。

稜線上

晴れてはいるものの、黒沢十字路付近はかなりの強風。うっかり油断をするとよろめくレベルです。山頂へは登れたのですが、その先の距離と、寒さや風の強さを考えて、五ノ池はあきらめて、のんびりモードで下ることにしました。

山頂

強風でじっとしていられないほど寒かった山頂とは対照的に、覚明堂を過ぎると一転してのどかな世界です。リスクが少ない領域へ戻っていく過程は、とても安心感があって、昨日と同じ道を下るだけなんだけど、心穏やかに楽しめました。

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