日本のアルペンルートを代表する北アルプスの後立山連峰。南北に連なる名峰は大雑把に言って北側の白馬岳から南側の針ノ木岳辺りが主役と言っていいでしょうか。その入り口となる長野県・扇沢からアプローチできる爺ヶ岳(標高2669m)は、北アルプス後立山連峰デビューに最適な一座かと思います。冬期は残念ながら封鎖されるようなので、残る北アルプスの夏山シーズンから紅葉に彩る時期の眺望を楽しんでみてはいかがでしょうか。
マイカー登山のメリットが高い扇沢からの山頂ルート
爺ヶ岳は長野県の登山難易度をチャートする山のグレード表記では難易度B/体力度4の山です。同級グレードで代表的な山は、人気最上位グループの一座でもある燕岳・中房温泉ルートと乗鞍岳・畳平ルートなどがあります。
爺ヶ岳の登山ルートといえば柏原新道。日本百名山の鹿島槍ヶ岳〜五竜岳、二百名山の針ノ木岳といった人気の名峰への縦走路として知られる登山道です。黒部ダム・立山室堂への長野側入り口でもある扇沢ターミナルの手前に、その登山口は口を開けています。登山口周辺には無料駐車場が大小3カ所あります。マイカー利用の利便性の高さは魅力ですね。
小屋主さんの行き届いた整備が嬉しい登山道の柏原新道
柏原新道は扇沢の登山口から標高約2450mに立つ山小屋・種池山荘までを指しますが、なかなかのロングルートです。平均コースタイムは約4時間。前半は樹林帯、中盤以後は谷側の展望が開けてきます。初めての登山に最適な理由の一つに、道中所々に名称ポイントが10カ所以上あることを挙げておきます。休憩ポイントとしてリズムを作りやすいのではないだろうかと思います。取材日はあいにくの天候でガスに覆われてしまい、東側に位置する針ノ木岳を見ることはかないませんでしたが……。
また、この登山道は歩きやすく整備されている点も見落とせません。ルートの発着点となる種池山荘の小家主であった柏原正泰さん(享年92歳)が開拓し、後を継いだご子息の一正さんとお孫さんが3代に渡って頻繁に整備を続けてこられました。TV番組でも一正さん親子でのメンテナンスを続けていらした様子が放映されたので、ご存知の向きもあろうかと思います。心遣いの行き届いたステップは低く、極力フラットな石が配置され足さばきのストレスは軽減されているので、距離はありますが確実に安心して標高を上げることができ、稜線に立つ三角屋根の山荘前に立つことができます。
種池山荘といえば、登山ファンには燕岳の合戦尾根にある合戦小屋のスイカと並んで親しまれているグルメがあります。石窯のピザです。本格ピザは時間帯によってはオーダーできないようで、ピザ提供の時間に合わせて登下山をスケジュールするファンがいるほどです。