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登山者のための火山のリスクヘッジ ! 噴火リスクがある山に登るときの準備と対策とは

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万が一噴火に遭遇してしまったら

登山中に噴火に遭遇する確率は非常に低いとはいえ、突発的な噴火に遭う可能性はゼロではありません。小規模な噴火は前兆をつかむことが難しく、噴火警戒レベルが運用されている火山でも、レベル1から突然噴火する可能性も、ないわけではありません。

もしも登山中にいきなり噴火が起きたらどうすればいいですか?

「なるべく早く噴火の発生に気づいて、ただちに逃げる行動に移ること。グループで盛り上がっていたとしても、常に周囲の物音や状況に注意を払っておくこと。2014年の御嶽山噴火でも、頂上付近にいて助かったのは、噴火発生直後に気づいて、素早く行動することができた人たちです」と及川先生。

噴火に気づいたらどうしたらいいですか?

「火口から1km以内にいる場合は、すぐに近くにある山小屋やシェルターに逃げ込みましょう。建物が何もない場合は、大きな岩陰などに身を隠し、バックパックなどを楯のように使って頭部を守ってください。火口からある程度離れた場所にいて、噴火の影響がすぐには及ばない状況なら、火口から離れる方向へ退避します。その場合、風下側や谷筋はなるべく避けましょう」(及川先生)。

シェルター

ほかに何か気を付けることがあれば。

「山によっては、携帯電話・スマートフォンのエリアメールで噴火の情報が入る場合があります。山では圏外の場所もあり、バッテリー温存のために機内モードを設定する人も多いと思いますが、火山に登るときは電源を切らない方がいいと思います。

また、登山者が火山で気を付けないといけないのは、噴火だけではありません。

場所によっては、高濃度の火山性ガスが噴出していることがあり、火山性ガスによる中毒で死亡する例もあります。

二酸化硫黄ガス、硫化水素ガス、二酸化炭素ガスなどによるもので、二酸化硫黄ガスの場合、健常な大人だと問題のない濃度であっても、幼児などは影響を受けやすく、呼吸器疾患のある方なども注意が必要です。

火山ガスによる事故を防ぐには、高濃度の火山ガスが出ている噴気孔に近づかないこと。

噴気

注意が必要なのは、低温で濃度が高い火山ガスは空気より重いため、風があまりないときには、噴気孔まわりのくぼ地に溜まることがある点です。噴気孔の風下に近寄らないこととあわせ、風の強さと地形にも注意を払っておきましょう」(及川先生)。

火山大国である日本で登山を楽しむためには、最低限登る対象が火山かどうかを調べ、登山前に天気予報を確認するように、直近の状況を確認することが大事。そして、もし噴火に遭遇したときのことも念入りに考えておくことが必要なんですね。

日本火山学会が作成したパンフレット『安全に火山を楽しむために』も参考になります。http://www.kazan.or.jp/J/doc/kazan_anzen_high_q.pdf

充分な準備をした上で、火山ならではの多彩な魅力を楽しんでいきたいと思います。及川先生、ありがとうございました。

【取材協力】
■及川輝樹(おいかわ てるき)
信州大学理学部地質学科卒・信州大学大学院地球環境システム科学専攻修了。専門は地質学、火山学、第四紀学。現在は産業技術総合研究所(産総、GSJ/AIST)において、地質図の作成に従事するとともに、全国の火山を対象とした地質学的研究を行っている。著書に『日本の火山に登る 火山学者が教えるおもしろさ』(山と渓谷社)がある。