丹波の名峰、白髪岳から松尾山を周回するトレッキングルポ前編「そそり立つ岩尾根を登る! 丹波富士トレッキング」に続く後編です。
スリリングな岩場の上にある白髪岳山頂は360度の眺望が開けて居心地のいい場所です。
北東側には篠山城下の街並みと、その背後に広がる多紀連山の山並みが見えます。城下町の右側には、織田信長の命を受けた明智光秀が丹波攻めで苦戦したことで有名な、八上城跡があります。
山頂から、つぎの松尾山を目指して北へ伸びる尾根を下ります。コルから先は、白髪岳とはまったく雰囲気が変わって、なだらかな地形で岩もほとんど見当たりません。隣合わせの山でこれほど地質や地形が違うのは、とても不思議な気がします。
深い森の中を登っていくと、やがて687mの松尾山。高仙寺山という別名もあります。
大化元年に、インドから渡来した高僧である法道仙人がこの山上に草庵を結び、のちに天台宗の寺として栄えた高仙寺が中腹にありました。戦国時代には山城が築かれ、丹波酒井氏の居城だったのが、明智光秀の丹波攻めの際に陥落、全山焼失したと伝わっています。
ミステリアスな古寺跡ゾーンへ
松尾山頂から南へ伸びる尾根を下っていきます。山頂には、遺跡らしきものは何もなかったのですが、名もなき小ピークを一つ越えて、森の中の踏み跡をしばらく下っていくと、突如開けた場所に出ました。石仏のようなものがたくさん並んでいます。
大小はありますが、その数40数基。高仙寺の歴代僧侶の墓碑で、「卵塔(無縫塔)群」と言うものだそう。
あまり耳にしたことのない言葉で、人に説明するのに、口で「らんとうぐん」と言うと、「乱闘軍」と聞こえそうな気がしますけど……
寺跡の一部に、朽ちかけた古い説明看板がありました。それによると、七堂伽藍のほかに25坊もある大寺であった様子。朝からずっと、誰にも会わない静かな山だけど、かつては多くの人々が暮らし賑わっていたんですね。諸行無常……。
卵塔群からは、まっすぐ南へ伸びる尾根からはずれて、不動滝へ続くトラバース道を進みます。
大きな寺跡だけあって、あちこちにかつてお堂があったらしき平地が広がり、石仏なども点在しています。山城跡でもあるので、廓があったのかもしれません。
しかし、お詣りする人もあまりないのか、苔むして半分自然に還りつつある雰囲気。かつての栄華を伝えつつ、ただ静かに佇んでいます。
礎石が残る広場に出ました。高仙寺の本堂などがあった場所なのかも……?
しかし、説明板もなにもなく、寂しさだけが漂っていました。