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季節によって味が変化する? 野草を食べて育った牛から絞る真の牛乳「田野畑山地酪農牛乳」 産地直〝食〟なソトごはん

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乳牛の酪農というと、どんな景色を思い浮かべますか。おそらくほとんどの方が、牛乳の商品パッケージによく描かれているような、草原で牛が草をはむ風景を想像するのではないかと思います。

しかし、じつはこのような放牧を実践している酪農家は珍しく、日本において自然の中での放牧を実施している農家はたった3~4%ほど。一般的な乳牛は放牧せず、輸入飼料を食べて育ちます。

野に生えた草を食べる牛と、輸入飼料のみを食べる牛とでは、牛乳の味にも違いがあります。そういった意味では、わたしたちは自然の中に生きる牛から絞る〝本当の牛乳の味〟を知らないのです。

そんな中、急傾斜地を活かして牛を自然の中に放し飼いにし、野草をのびのびと食べさせる「山地酪農」という方法で牛を育てる酪農家も存在します。そしてそこから生まれる牛乳の味は格別で、リピーターが絶えないのだとか。

生産者の現場取材&現地で実食シリーズ、産地直〝食〟なソトごはん。今回は山地酪農を実践している、岩手県にある田野畑山地酪農牛乳株式会社の契約農場を訪れました。

夏の味が舌で分かる? 牛乳のおいしさのわけ                          

「お客さんが牛乳を一口含んで、『うわ、牛乳』と言いました。

それを言ったのは一人や二人ではなく、なぜかそういう表現する。牛乳だってことは、はじめから分かっているのに、どうしてそんなこと言うのかと不思議に思っていました」

そう話すのは、田野畑山地酪農牛乳株式会社の創業者、吉塚公雄さん。

「『これ、他の牛乳と全然違うよ』とあまりにもおっしゃるんです。気になってほかの牛乳を飲んでみたら、たしかに味が全く違っていてびっくり」

なぜ田野畑山地酪農牛乳は味が違うのか、その答えは、訪れた吉塚農場の放牧の様子をみればすぐに分かりました。

田野畑乳業では1年中、牧山で牛を放し飼いにする「山地酪農」という放牧形式をとって牛を飼育しています。

爽やかな風が吹き抜ける中、広大な山を自由気ままに歩き回って野草をはむ牛たち。のどが乾けば湧き水を飲み、眠たくなったら草地で昼寝をする。

この牧場ではとても「牛が牛らしく」生きていて、その牧歌的な風景に、思わず目を奪われました。きっとこの景色すべてが、牛乳のおいしさの秘密です。

牛たちは、山に生えている様々な種類の野草をバリッバリッと音を立てて食べています。おそらく味が違う一番大きな理由は、乳牛が食べているものが野草だから。ここに生えている野草は、少なくとも50種類以上もあり、春、夏、秋、冬と季節によって入れ替わります。そうしてお互いの草が、お互いにない栄養を、バランスよく補っているのです。

「季節によって生えてる草が違うと、牛乳の味も変わってきます。それに一番お客さんが早く気がつく。飲んでると、『あ、そろそろ夏の味になってきた』って分かるんですね」

吉塚さんからいただいた牛乳をごくりと飲むと……たしかに濃厚な「牛乳の旨み」をしっかり感じられました。ミルクの甘みとコクがあり、それでいてスッキリしているので何杯でも飲みたくなります。訪れたのは初夏だったので、きっとこれが夏の味なのでしょう。

人にも牛にも自然にもやさしい「山地酪農」

のびのびとあちこちの草を食べて歩き回っている牛たちは、とっても幸せそうです。

山地酪農の最大の利点は、牛が健康長命になるところ。歩き回ってお腹いっぱいまで新鮮な草を食べられるから、元気になるのです。

吉塚さんは「獣医さん泣かせなんだよ。牛がみんな健康になるから、山地酪農が普及すればするほど、仕事がなくなります」と言って笑いました。

また、田野畑の山地酪農では、放牧にあたって化学肥料や農薬は一切使用しません。薬品を使うのは、器具の消毒と洗浄のときだけ。「薬品は牛の健康だけじゃなくて、自然も傷つけるから」と吉塚さん。

飲む人だけでなく、牛にも自然にもやさしいのが田野畑の山地酪農です。

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