世の非情さが儚い稚児落としの言い伝え
当時、この崖は声の反響が大きく「よばわり谷」と呼ばれていたそうです。息を殺すように音を忍ばせて脱出した矢先、赤子の声に追っ手が気づくことを恐れて亡き主君の遺児を守るためにとはいえ、戦国時代の世の非情さと儚さはかくも残酷なものだったのですね。谷の名は後世の大月市の人々によって「稚児落し」と名を変え、言い伝えられてきました。
標高598mの稚児落しは登山愛好者が岩殿山の縦走を楽しむべく足繁く訪れる人気のコースとなっています。畑倉登山口からだけでなく、最寄りの浅利口から先にこのスポットからの大月市街を睥睨し、岩殿山へ攻め入る登山者も、かなりの割合でいるようです。いずれにせよ踏み荒らすことなく景観を楽しみ、間違っても踏み外すことないように願いたいものです。