JR中央本線大月駅ホームから目前に迫る巨岩の鏡岩がアイコンの岩殿山。東京スカイツリーと同じ634m標高の低山ですが、戦国大名がしのぎを削った山城の山頂と、縦走路にある稚児落しの恐ろしい響きを持つ岩場など歴史の奥深さを感じさせます。岩殿山単体だけでなく、アップダウンも侮れない縦走のアスレチックなルートは、秀麗富嶽十二景にあって出色の醍醐味と言えます。
城マニアも納得の殿様気分を味わえる絶景の山頂
岩殿山からの富士山の眺望は、まさに殿様気分を味わえる「佳き絶景かな」と言えます。山城本丸跡から見える富士山はもちろん、麓には駅を中心に大月の街並みが広がり奥行き感ある画角を作り上げます。正面に富士山を見て右手西側に高川山、左手の東側には道志山系の主峰・御正体山を従えています。戦国時代は武田家の守将・小山田信茂が築き上げた名城を偲びながら絶景を味わえます。
岩殿山にはこの山頂碑があるポイント以外に展望所が、数100mほど進んだ先に置かれています。東屋も設置されていますので、休憩に利用したいところですね。岩殿山は、また桜鑑賞の山としても知られています。来春の花見登山にスケジュールしてみることをお勧めしておきます。またこの展望所周辺に、山城だった史跡を辿ることができます。城マニアなら、ぜひ!
稚児落しへの縦走こそ岩殿山登頂の醍醐味
岩殿山の核心部と言っていいと思います。稚児落しです。岩殿山と尾根をつなぐ天神山から浅利集落に抜ける稜線上に、そのスポットはあります。畑倉から山頂までのルートはソコソコの急登ですが、山頂から稚児落しまでのコースはアップダウンが激しく、一部には低山とは思えない難度のクサリ場もあります。このアスレチックな縦走が岩殿山が愛される理由かもしれません。
稚児落しは戦国時代の織田信長による岩殿城攻めから逃れるために、主君・小山田信茂の遺児である赤子を臣下が谷に投げ落とす悲劇があったと言い伝えられています。約200mと言われる巨大な一枚岩の絶壁は壮観ですが、上から見下ろすと、まさに足がすくんでしまいます。覗き込むのもほどほどに。岩殿山登頂のクライマックスにふさわしいインスタポイントから下山は浅利口へ。
岩殿山への登頂ルートは現在1ルートのみなので要注意
岩殿山への登頂ルートは2024年6月現在で、畑倉登山口の1本に限定されています。本来であれば麓の丸山公園脇からの強瀬登山口から山頂への直登ルートがあるのですが、一部登山道崩壊により長らく通行止めとなっています。公共交通機関利用の登山者は大月駅から徒歩で1時間弱歩くか、最寄りバス停の「自動車教習所前」までバスを利用することになります。
マイカー派には畑倉登山口駐車スペースが新たに整備されたようで、停めやすくなりました。もちろん従来からある岩殿山丸山公園駐車場も利用できます。ただしこの駐車場から畑倉登山口までは、徒歩20分くらいガードレールのない車道歩きが待っていますので注意が必要です。
一部報道からですが、大月市により現在通行止めとなっている強瀬ルートを再整備することになったようで、今秋のルート開通を目指しているそうです。問題は鏡岩の風化らしく、新たな整備ルートは駅から見える鏡岩を迂回する方向とのこと。秋色に染まる岩殿山も、また素敵です。