アウトドアでは、必然的に昆虫と出会う機会が多くなります。昆虫少年や虫愛ずる姫君じゃなくても、昆虫って観察してみると、意外とかわいらしく見えてくるものです。
このシリーズではそんな、ちょっと気になる虫たちについて、昆虫の専門家にお話をお聞きしていきます。
今回は、昆虫が苦手な人からも好まれる優美で美しい「チョウ」について、長年チョウの飼育に携わってこられた、箕面公園昆虫館副館長の清水聡司さんに教えていただきました。
色とりどりのチョウの乱舞にうっとり
不思議な生態についてもいろいろ学べる! 関西のおすすめ昆虫館3選【近畿エリア】の記事を書いたときに、関西にある3つの昆虫館を訪れたのですが、いずれも立派な放蝶園があって、乱舞するチョウの姿にうっとりと見入ってしまいました。
広々とした温室の中には、色鮮やかな熱帯の花々が咲き乱れていて、それだけでもとても美しい眺めなのですが、その空間を優美な動きのチョウたちが舞い飛んでいて、まるでファンタジーの世界のようでした。
チョウの種類によって飛び方もまちまち。ふわふわと空中を漂うように飛ぶもの、花から花へと忙しく移動するもの、花に止まって翅を広げたり閉じたりするもの……。
写真を撮ろうと近づくとさっと逃げてしまうものもいれば、カメラを向けてもまったく気にせず、ゆったりと構えているチョウもいます。翅の色や模様もさまざま、チョウってこんなにいろんな種類がいるんだ、と改めて興味がわきました。
これからの季節に出会えるチョウ
箕面公園周辺はかつて〝昆虫の宝庫〟と言われたエリアですが、どんなチョウが生息しているのでしょうか。
「箕面公園はモミジの名所として知られていて、6月ごろには幼虫がモミジの葉を食べて育つミスジチョウが見られます。ほかにも、アオスジアゲハ、アゲハ、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、モンキアゲハなど、アゲハ類も見られます。
また、渓谷沿いでは、運が良ければ、大きくて優美なオナガアゲハを見ることもあります。
近年では、南方系の蝶のイシガケチョウやクロコノマチョウもよく見かけるようになりました。
チョウの姿が少なくなる真夏には、滝道沿いの少し明るい場所でコミスジが悠々と舞っています。秋にはキタキチョウやウラギンシジミが数を増します。
また、秋には渡り途中のアサギマダラが姿を見せてくれることもあります」と清水副館長。そのほかにも、さまざまな質問をさせて頂きました。
時間帯や場所によってざまざまな蝶に出会える
いろんなチョウに出会う秘訣はなんでしょうか。
「滝道や周辺の遊歩道を歩くだけでも季節ごとにいろいろなチョウの姿を観察することができます。種類によって、飛ぶ高さや好みの明るさ、時間帯があるので、散策する時間を変えていろんな位置を見渡しながら歩いてみてください。見通しのいいピークや展望台などがあれば木々の上を飛ぶチョウの姿も観察できるかもしれません。
チョウにはそれぞれに適した環境があります。ヤマトシジミやアゲハ(ナミアゲハ)のように、街中でも棲むことのできるチョウもいれば、オオムラサキのように里山がなければ棲めないようなチョウもいます。また、アサギマダラのように、季節によってみられる場所の異なるチョウもいます。いろんな場所へ、いろんな季節に出かけてみてください」(清水副館長)
幼虫を見つけたければ幼虫の食べ物を探す!?
チョウになる前の幼虫を見つけるにはどうすればいいですか?
「チョウの幼虫は、その種ごとに決まった植物を食べます。その植物を探すと、見つかる確率が格段に上がるので、植物の知識も身につけるといいですね。初めての場所では、ゆっくり歩きながら食草となる植物がないか探してみてください。食草が見つかったら、葉っぱのかじり跡や、フンなどの手がかりを目印に探すといいでしょう」(清水副館長)
蝶を飼育するときは餌のことも考え慎重に
チョウの幼虫を飼育できますか? 幼虫を見つけたら、飼ってみてもいいのでしょうか。さなぎになって、やがて羽化するところを見てみたい……。
「幼虫のエサとなる食草が無理なく用意できるかをまず考えてみてください。自宅周辺でその植物が手に入らない場合には、幼虫と一緒に食草も持ち帰ることになりますが、昆虫はもちろん、植物の採取が禁止された場所でないことを確認したうえで、必要最低限だけ採取するようにしてくださいね」(清水副館長)