地元住民が守り育てている可憐なササユリ
いよいよこの日の目的地、日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」にも登録されているササユリの保護・増殖活動が行われているエリアへ。棚田や古民家が点在する集落の端の方に、小さな斜面をネットで囲った一角があり、その中にたくさんのササユリが咲いていました。近づくと、かぐわしいユリの香りが……。
ササユリは、日本特産のユリの一種で、本州の中部以西から四国・九州にかけて分布。古事記にも「山由理草」という名で記載があり、古くから親しまれてきた可憐な花です。
葉が笹に似ていて、花は上品な淡いピンク色。上品な香りがあるのも魅力です。
かつては、どこにでも生えているありふれた花だったそうですが、里地里山の環境が失われつつあることや、盗掘によってその数は減少の一途。地域によっては、準絶滅危惧種に指定されているところもあります。
筆者も、人のあまりいないマイナーエリアを歩いているとき、引っこ抜いたと思われるササユリの株を、袋に入れて歩いている人を目撃したことがあります。
植物はどれも、適した環境の場所を選んで生えているので、持ち帰って植えたところでそうそう育つものではないでしょう。自分の庭でじっくりと楽しみたいのかもしれませんが、〝そこを選んで生えてきた〟のに、まったく違う環境に連れ去られることは、植物にとっては迷惑な行為だと思います。
深野の里のように、地域住民に大切にされて、ずっと先の世代まで美しいササユリが楽しめますように……
この地域では、ササユリだけでなく、季節ごとの魅力がたくさんあるみたい。ぜひまた訪れてみたいと思いました。