不思議な〝旅をするトンボ〟
海を渡り、長い旅をする昆虫と言えば、私は「アサギマダラ」というチョウを思い浮かべます。トンボにも旅をする種類がいるそうです。
「飛翔力が高いトンボの中でも、とくに移動力があるのがウスバキトンボ。毎年南方から海を越えて日本列島にやってきて、世代交代しながら北上していきます。都市部を含め、日本では一番よく見る種類かもしれません。昆陽池周辺でもよく見かけますよ」(坂本館長)
アサギマダラのように、快適に過ごせる適温を求めて旅をするのでしょうか?
「それが、とても不思議なのですが、北上するだけの一方通行なんです。彼らは日本の気候では越冬できないので、気温が下がってくると、旅先で死んでしまうと思います」(坂本館長)
ウスバキトンボは、何のために長い旅をするのでしょうか。じつは、その理由についてはまだ未解明だそうです。
NHK番組「ダーウィンが来た!」の「旅するトンボ大調査」と連動し、「全国マーキング調査」が実施されています。ウスバキトンボを見かけたら、翅にマーキングがないか探してみてはいかがでしょうか。謎の解明に一役買えるかもしれませんよ。
■ウスバキトンボ全国マーキング調査
https://sites.google.com/view/usubaki
【取材協力】
■坂本昇(さかもと のぼる)
■プロフィール:伊丹市昆虫館館長、学芸員。専門分野は博物館教育で、伊丹の地域性を活かしたイベント事業「鳴く虫と郷町」などを担当。日本博物館協会棚橋賞、日本展示学会作品賞、論文賞などを受賞。
https://www.itakon.com/