噴火の確率と登山者にとっての危険度
「日本にある活火山は、平均すると1年に5山程度が噴火していますが、御嶽山以外で、登山者が噴火に巻き込まれて亡くなった事例ってほとんど聞きませんよね。今は観測も強化されたため、立ち入り規制が行われていない活火山で、登山中に噴火に遭遇する〝確率〟は、限りなく低いと言えます」(及川先生)
しかし、火口近くにいるときに噴火すれば、死亡リスクはかなり高いのでは……?
「もちろんそうです。遭遇する可能性は非常に低いものの、噴火時に火口近くに居合わせた場合のリスクはかなり高いと言えるでしょう。
御嶽山噴火以降、監視体制や情報発信に関して、大きく変わりました。とくに注意すべき活火山については、気象庁が24時間監視をしていて、何か異常があれば『火山登山者向けの情報提供ページ』にすぐに掲載されます。
御嶽山の噴火後、注意喚起を行う基準の見直しが行われ、より厳格に規制がかけられるようになりました。そのため以前より安全になったことは間違いないです。特に御嶽山の場合は、噴火を経験して噴火警戒レベルの引き上げ基準を厳しくしたので、かなり安全になったと考えられます」(及川先生)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/map_0.html
「登山中に噴火に遭う確率は、一般的な山岳遭難や交通事故と比べると非常に低いもの。いたずらに怖がるのではなく、火山に関してどんなリスクがあるのかを知り、事前に必要な情報を確認しておくなど、登山者自身がリスクを下げる努力をした上で、火山が持つ大いなる魅力を楽しんでみてはいかがでしょうか」(及川先生)
次の記事では、具体的な噴火リスクの確認方法と登山計画について解説していきます。
【取材協力】
■及川輝樹(おいかわ てるき)
信州大学理学部地質学科卒・信州大学大学院地球環境システム科学専攻修了。専門は地質学、火山学、第四紀学。現在は産業技術総合研究所(産総、GSJ/AIST)において、地質図の作成に従事するとともに、全国の火山を対象とした地質学的研究を行っている。 著書に『日本の火山に登る 火山学者が教えるおもしろさ』(山と渓谷社)がある。