管理された公園や施設で行うスポーツとは異なり、自然の中で活動する登山などのアクティビティには、リスクがつきものです。想定外の天候急変や沢の増水、転倒や滑落、落石、道迷いもあるかも?
フィールドでのリスクを避けるにはどうすべきか。このシリーズでは、筆者が実際に体験した実例も踏まえてリスク回避について解説します。今回は、万一の時に役立つかもしれない、位置情報と通信機能について。
遭難時に心強いサポート「山岳遭難対策制度(ココヘリ)」
万一行方不明になったとき、ヘリコプターやドローンを活用して迅速に捜索し、救助につなげる「ココヘリ」。専用の発信機を携行することにより、携帯電話が圏外の山域であっても、ヘリやドローンに搭載した受信機によって捜索してもらえるサービスです。
筆者も、運用開始とほぼ同時に加入し、ずっと会員継続しているのですが、最近サービス内容が大きく変化し、より安心できる制度になりました。
ヘリによる捜索のみならず、民間の捜索救助組織の手配にも対応。山に精通したオペレーターによる関係各所との連携により、3時間以内に86%発見という実績があります。
わずか20gの発信機は、最大16kmまで電波を飛ばすことができて、目視による捜索とは比べ物にならない高い発見率につながっています。航空会社との提携ネットワークにより、全国の山岳をカバー。各都道府県の警察・消防がココヘリ受信機を搭載するケースも増え、現在では39都道府県で導入されているそうです。
筆者は、ヘリ捜索をされた経験はさすがにありませんが、ココヘリの端末は〝登山のお守り〟のような感覚で携行しています。
近年はトレランの大会などで携行が義務化されているケースも増えてきているので、利用したことのある人も増えてきているのではないでしょうか。
既存の発信機と比較して、捜索時間を大幅に短縮できるGPS搭載の最新モデルもリリースされて、さらにパワーアップしています。
現在のココヘリは、24時間365日対応のコールセンターがあって、家族が山から帰ってこないという場合にいつでも相談できる点も安心要素のひとつ。また、ココヘリがヘリコプターや民間の捜索救助組織への手配もすべてやってくれて、年間550万円までは費用負担なしでカバーされます。自分のみならず、家族の安心につながる点がとてもよいと思っています。
【ココヘリ】
■AUTHENTIC JAPAN
■有料会員制
■専用発信機使用
■https://www.cocoheli.com/
登山アプリYAMAPの「みまもり機能」
最も利用者が多い登山アプリ、YAMAPには、「みまもり機能」という位置情報共有システムがあります。
この機能をONにした登山者同士がすれ違うと、お互いの位置情報が自動的に記録・交換され、携帯電話の圏外にいても、オンラインになった時点で、そのデータがYAMAPのサーバーに送られて自動的に記録が残るというもの。
万一、アクシデントが起きて、行方不明になった場合に、救助隊が捜索をする際に位置情報のデータが役立ちます。
この機能によって、命が助かった事例をひとつ。登山が好きで週に2、3回は一人で山へでかける父に、YAMAPの利用を勧め、みまもり機能の設定をしてあげたAさん。
あるとき父が滑落して動けなくなり、救助を要請する事態に。AさんがYAMAPの「みまもり機能」による位置情報を消防に伝えたところ、約40分程度で航空隊が現場へ到着。大けがをして、低体温症になりかけていたものの、一命をとりとめることができたそうです。
参考 https://togetter.com/li/2052363
事前に登録した家族などのメールアドレスに、随時位置情報が送られるので、何もなくても、「待っている人」も安心できる機能です。
かつては、すれ違った登山者同士のみの位置情報が交換されるだけでしたが、現在はシステムそのものがアップデートしていて、お互いがすれ違うまでに出会った他のユーザーの位置情報もまとめて交換できるようになりました。従来の「1対1の交換」ではなく、「複数人対複数人の交換」になるため、位置情報の共有率がぐっと高まり、万が一行方不明になったときに、救助される可能性が大きく向上します。まさに「命を救うツール」かもしれません。
参考 https://yamap.com/magazine/32342
【YAMAP みまもり機能】
■YAMAP
■無料
■iPhone/Android対応
■https://help.yamap.com/hc/ja/sections/900000177946-%E3%81%BF%E3%81%BE%E3%82%82%E3%82%8A%E6%A9%9F%E8%83%BD