するどい目つきに大きな口。ワイルドで恐ろしい見た目をしつつも、イラストやぬいぐるみなどではキュートに表現されることも多いワニ。映像や写真、動物園などで見ることはあっても、その生態はよく知られていません。ワニに関する素朴な疑問を、東京都恩賜上野動物園のは虫類館飼育展示係長の高橋英之さんにうかがいました。
疑問1:ワニって何歳くらいまで生きるの?
「上野動物園にワニは3種類います。一番大きいのがイリエワニです。ほかに、ニシアフリカコガタワニ、マレーガビアルがいます」(高橋さん)。
実はワニは長生きする生き物だそうです。
「今いるイリエワニは1966(昭和41)年に園に来ました。ですから、60年近く上野動物園にいることになります。来園した時点で1歳か2歳程度だったと思うので、やはり60歳近いのではないでしょうか」(高橋さん)。
疑問2:ワニは恐竜と同じ時代からいた? 恐竜の仲間?
「爬虫類自体が今から3億年ほど昔の古生代石炭紀あたりと、古くから存在していました。ワニがいつからいたのか正確なことは分かりませんが、恐竜の時代(中生代ジュラ紀や白亜紀)にはすでに今のワニの形だったと考えられています」(高橋さん)。
ということは、やはり恐竜の仲間ではないかと思ってしまいますが。
「確かに、恐竜を小型化させたような見た目をしていますが、実は現在生きている生き物で恐竜に一番近い生き物とされているのは鳥なんです。化石を調べたり、最近は遺伝子レベルで調べたりしている学者の方もおり、骨の形などで、発掘された化石と、生きている個体から辿っていくと鳥類の方が恐竜に近いということになるんです」(高橋さん)。
恐竜にも始祖鳥や、最近の研究でティラノサウルスにも羽毛が生えていたというものもあり、鳥が近いと考えても不思議ではありません。
「ただし、爬虫類であるヘビ、トカゲ、亀、ワニの中ではワニが一番恐竜に近いと言われています」(高橋さん)。
答えとしては「ワニは恐竜から遠くはないが、一番近いというわけではない」ということだそうです。
疑問3:なぜ氷河期でも生存できたの?
ところで、同じように氷河期を迎えながら、なぜ恐竜は絶滅して、ワニは生き残ったのでしょうか。
「水に適応したのが大きかったという説もありますが、水の中にいる恐竜もいたので、はっきりとは分かりませんね。また、現在生き残っている爬虫類は変温動物で、長期間食べなくても平気だからだという説もあります。ワニは1週間に1度の食事でも大丈夫なんです。一方、恐竜は大きな体を支えるためにたくさん食べなくてはいけなかったので、生き残るのが厳しかったのかもしれないですね」(高橋さん)。
【DATA】
イリエワニ
学名 Crocodylus porosus
分類 ワニ目 クロコダイル科 クロコダイル属
分布 アジア大陸(インド南東部、ベトナム 、フィリピン、スンダ列島など)、ニューギニア島、オーストラリア、カロリン諸島
【DATA】
ニシアフリカコガタワニ
学名 Osteolaemus tetraspis
分類 ワニ目 クロコダイル科 コビトワニ属
分布 アフリカ(西アフリカ南部、中部アフリカ西部)